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「和太鼓審査員、質上げよ」=渡辺講師ら助言=子供たちがかわいそう=日本の伝統文化再構築=〃思い〃感じ取って帰国へ

2006年7月28日付け

 去る六日から二十六日まで、和太鼓の普及・指導を行うため来伯していた日本の太鼓集団「天邪鬼」の渡辺洋一さんと影山伊作さんは、二十六日、ニッケイ新聞の取材に答え、ブラジル太鼓協会(矢野ペドロ会長)主催で八日に開かれた「第三回全ブラジル太鼓選手権大会」について、「審査員の質を向上する必要がある。子どもたちがかわいそうだった」と語った。渡辺さんによれば、今大会の審査員は太鼓を詳しく知らない人が多数を占め、審査基準もあいまいだった。「あれではどこのチームが優勝してもおかしくなかった」という。
 ブラジルで本格的に和太鼓が普及し始めたのは三年ほど前から。そのため正式に和太鼓指導者の認定を受けた人がほとんどいないのが現状だ。「(それでも)太鼓にある程度精通した人を中心にして審査をするべきだった。その上で他分野の審査員を入れるなどの工夫が必要だった」と苦言を呈した。
 この他にも「閉会式で出場選手たちを舞台後ろに並べて関係者が、長時間、あいさつをしていたのは問題」と振り返った。「大会の主役は、この日のために一生懸命に練習を重ねた子どもたち。大きな舞台の上で長く緊張した状態で待たされていてかわいそうだった」。
 これらは「日系社会の特徴」と渡辺さん。「今後の大会では式を手短かに済ますべき。選手のことを考え役員・関係者はあくまで裏方に徹することが大事」と助言した。
 影山さんは、二年前の来伯時にほとんど子どもたちと触れ合うことができなかった。今回の滞在にもほとんど休みが無く「疲れもたまった」。しかし、休憩もせず一生懸命に練習するブラジル人の子どもたちをみて「本当にいい子だな」と思った。渡辺さんも「逆に(彼らから)エネルギーをもらった。日本人の子どもより、子どもらしい」と実感した。
 ブラジルの太鼓のレベルを日本と比べると「中の下」と厳しい評価だが、太鼓の響きを新鮮に感じ、練習を熱心にする子どもたちの存在に満足した。今後、ブラジルでの和太鼓の発展は「二世、三世の人たちが支えていくことが大事」と話した。
 渡辺さんの三週間にわたる太鼓指導、ブラジル各地での印象を要約すればこうだ。「日系社会の中にもう一度日本の伝統文化を築き上げたい思いが起こっている」「日系人の中でアイデンティティーの確認を求める気持が高まっている」。