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熱くなるのはフィールド上だけ=チームグッズショップの挑戦

 コリンチャンスとパルメイラス―。四つあるサンパウロ州メジャーチームの中でも特に歴史的に仲の悪い両チームだが、この両チームのグッズショップのオーナーが手をたずさえてサッカーから暴力を取り除こうとして始めたあるキャンペーンが反響を呼んでいる。
 アンドレ・ルイス・カルネイロさんはコリンチャンスのシャツを着てライバルチーム、パルメイラスのグッズショップから出る際に、サイレンが鳴るのを聞いた。まるで商品を盗みでもしたかのように。
 「俺がコリンチャンスファンだからだよな」。それを聞いたショップオーナーのパウロ・メディーナさんは、ひとしきり笑った後、警報装置が故障していただけだと告げた。
 カルネイロさんとメディーナさんは5カ月前に知り合った。カルネイロさんは108あるコリンチャンスチームグッズショップの一つのオーナーで、同チームグッズショップはサンパウロ市、サンパウロ州内陸部のほか、連邦直轄区と6州に拡がっている。
 2人の友情は、先週末のパルメイラス対コリンチャンス戦(サンパウロ・ダービー)で、観客席での平和を促進するためにとった共同作戦によって広く知られるところとなった。
 二人は、各々の店の外に、「競争相手は敵ではない」「ライバルなのはピッチの上だけ」と書いた垂れ幕を飾ったのだ。2人の店はサンパウロ市タツアペの同じ通りにあり、互いの間は600メートル離れているだけだ。
 アンドレさんによれば「パルメイラスのショップはお隣さんになるはずだった」という。隣のビルを扱っていた不動産屋に「パルメイラスの店を開けたいというんだけど問題があるか」と訊かれ、「何も問題ない」と答えたのに、結局は少し離れた所に店が出たのだという。
 コリンチャンスショップとパルメイラスショップが一緒に店を飾るというアイデアは、今年2月のサンパウロ州選手権でチーム同士が対戦した時に生まれていた。カルネイロさんとメディーナさんはお互いの客の視線に気を使い、細部への配慮を忘れなかった。パルメイラスショップに張られた幕のメッセージは緑の字でかかれ、パルメイラスのロゴマークが左側に描かれている。コリンチャンスショップの幕は黒文字で、コリンチャンスのロゴマークが左側に描かれている。
 カルネイロさんはもうパカエンブ・スタジアムには通っておらず、かつて一度もオルガニザーダ(組織化されたサポーター集団)の一員だったことは無い。最後にスタジアムに行ったのは去年の事だ。「昔はよく行ってたけど、試合の時間がお店の時間と重なるようになって行けなくなったんだ」。彼は頻発するサポーター同士の喧嘩を嘆き、「オルガニザーダっていうくらいだから、ちゃんとオーガナイズ(組織)されてないとね」と言う。
 メディーナさんも一度もオルガニザーダの一員だったことはない。子供の頃、従兄弟の影響でパルメイラスファンになったが、大きなサポーター集団を持つライバルチームとの対戦には行ったことがない。「スタジアムの中ではサポーターが素晴らしい応援をして楽しいけど、試合前後、スタジアムの外では常に喧嘩の危険があるからね」と漏らす。
 二人のアイデアは大きな反響を呼び、フェイスブックで6万の「いいね!」と7万の「シェア」を獲得した。「2人だけで始めたことがこんなに大きな反響を呼び、チーム側からも電話がかかってくるなんて思ってもいなかったよ」とカルネイロさんは振り返った。
 インターネットなどを通じて反対意見も届いたが、「素性を隠して何かを言ってくる奴のことなんて気にしないね」とメディーナさんは言う。
 10月19日には悲しい事件も起こった。パルメイラスファンのレオナルド・マタさんが、同じサンパウロ州のチーム、サントスFCとの対戦の前に、サンパウロに向かうサントスサポーターの乗ったバスを妨害しようとして、バスに同伴していた乗用車に轢かれて命を失ったのだ。レオナルドさんは今年14番目のサポーター同士による抗争の犠牲者となってしまった。
 「俺達の目指しているのは、人々に対戦チームのファンと喧嘩するなんて選挙で支持候補者が違うからって喧嘩するのと同じくらい意味がないと知らせることさ」とメディーナさんは言う。
 この運動を同じ通りの他の店にも広げたいと願う二人は、自分たちが始めたキャンペーンを継続し、サッカー界から暴力の汚点を取り除こうとしている。(26日付エスタード紙より)