商工開発省が3日、10月の貿易収支は、同月としては変動相場制を取り入れた1998年に次ぐ11億7千万ドルの赤字を計上し、今年の累計も18億7千万ドルの赤字となったと発表したと4日付伯字紙が報じた。
10月の輸出は昨年同月比19・7%減の183億3千万ドルで終り、昨年同月より15・4%減って195億ドルだった輸入を約12億ドル上回った。輸入の減少は景気の低迷や購買力の低下などが原因と考えられるが、輸出の減少は鉄鉱石などのコモディティ価格の低迷と輸出量そのものの減少、自動車を中心とする工業製品の販売も落ち込んだ事が原因だ。
1~10月の累計は約19億ドルの赤字となったが、商工開発省では年末までには状況が反転、年間収支は黒字で終ると見ている。これは、昨年10月の時点での累計収支が20億ドルの赤字であったにも関わらず、最終的には24億ドルの黒字で終った経験から来た見解だ。
ただ、同省貿易局のダニエル・ゴディーニョ氏は、黒字転換が可能か否かは11月の結果次第と発言。政府関係者が今年の貿易収支が赤字で終る可能性もあるとの見解を示したのは初めてだ。ブラジルの年間貿易収支は2000年に赤字計上以来、黒字が継続している。
貿易収支の悪化は経常収支悪化の最大要因でもあり、政府としては何としても黒字で終えたいところだが、そのためには鉄鉱石や肉などの主要産品の国際価格の回復と販売量の増加が必須だ。また、国内の石油生産が増えれば、原油や派生品の輸入削減も可能となる。
鉄鉱石価格は今年既に20%、10月に限れば昨年同月比40%低下した。もし昨年並みの価格で同量の輸出が出来ていれば、10月の輸出額は54億ドル増となり、赤字転落は免れた。
また、アルゼンチンの経済悪化も大きく響き、1~10月の同国への輸出は昨年同期比で27%減った。自動車関連では乗用車の41%を始め、貨物用車が30%、自動車部品が24%落ち込んだ。また、石油採掘用プラットホームが58%、精製糖が25%落ち込んでいる。
10月の貿易関係で唯一明るい話題は、豚肉輸出が1億8300万ドルの新記録を達成など、肉類の輸出が順調な事だ。肉類の輸出は価格と量が共に上昇。牛の生肉は11万3千トン、豚の生肉も9月比21%増の4360万トン、鶏生肉も9月とほぼ同じ32万9700トンを輸出した。
なお、鉄鋼石の価格と輸出量低下により、10月最大の輸出先国は中国ではなく米国となった。