2006年7月8日(土)
【エスタード・デ・サンパウロ紙七日】ブラジル地理統計院(IBGE)は六日、工業生産が五月に前月比で一・六%増の活況を見せ、国内市場の活力を生かした成長も可能であると表明した。五月はローンの緩和とインフレ低下、基本金利の引き下げ、勤労者所得の好転などがあり、工業生産には大きな推進力になったという。昨年同月比では四・八%増、五月までの累計で三・三%増。応用経済研究所(IPEA)は、マクロ政策の財政政策と通貨政策が功を奏し、国内市場が育ったためとみている。これには政府の公共サービスへの投資と最低賃金の調整が、工業生産に拍車を掛けたと分析。
国内需要の高まりで国内産業が予想以上の成果を上げた。特に好調だったのは原料や資材、部品など中間財で、六〇%を占めた。メーカーは在庫調整が進み増産体制が整ったため、新たな需要増に対応できると意気込んでいる。中間財業界は年初、弱気を懸念したが、五月に前月比一・九%と蘇生した。
輸出が不調で成り行きが憂慮されるとき、国内需要の高まりは地獄に仏であった。IBGEの国内市場の躍動発表は、業界に活気を呼び戻すと思われる。調査では、メーカーの五八%が五月の生産が昨年同月比で増加と答えた。四月では、まだ三八%であった。
IPEAは、適切なマクロ政策により国内市場の基盤が強固となり、国内需要も安定したとみている。二〇〇五年九月から始まった基本金利の引き下げ効果が、ようやく〇六年第2・四半期に向け工業界に根付き始めたらしい。
工業開発研究所(IEDI)の報告によれば、過去数カ月間動きがなかった中間財や資本財分野に躍動の兆しが見えたことは、国内産業の経済成長が錨を下ろしたものという。
IBGE発表の内訳は昨年同月比で自動車産業が六・二%増、工作機械が三・一%増、食品が二・五%増で牽引車となった。振るわないのは、電子部品と通信機器で七・九%減。原因は五月二日から始まった国税庁職員のストで輸入資材がストップしたため。ストは五月丸々行われ、多大な被害を被った。
国内需要の増加は、業種によって倍増をもたらした。テレビ受像機でフィリップスと覇を競うセンピ東芝は、五月までの累計で一三〇万台を出荷し、昨年同期比八〇%増。同社は〇五年、二一〇万台を出荷した。他にDVDプレイヤーが六〇%増、音響機器が六〇%、デスクトップ型パソコンが一〇〇%増とW杯景気である。
エタノールは、国の内外で需要増が顕著である。お陰で砂糖は過去十二カ月で国際価格が九〇%も上がり、史上最高値をつけた。選挙景気では、政府が公共サービスやインフラに資本投下をしているため、建設機器や鉱業機器が昨年同月比一〇%増と活気がある。
ブラジル経済は自給体制が整いつつあるようだ。一方輸出は昨年に比し、伸び率が停滞の一途にある。輸出が、国内総生産(GDP)をけん引したころとは丸反対。工業全般が五月までに三・三%増産したのに、輸出産業は二・九%に留まった。原因は為替だが、輸出産業には自力本願の為替克服しかないようだ。