弊紙連載記事をまとめた『海を渡ったサムライたち』(ニッケイ新聞編集局報道部・著=幻冬舎ルネッサンス)が、神田神保町の三省堂の歴史書コーナーに平積みされていると在京の知人に教えてもらい、深い感慨をおぼえた。ある意味、日本移民の歴史が、日本の知識階級に認められたことではないかと思った。三省堂神田本店といえば、日本最大の古本街の真中にそびえ、知識人が集まる有名書店だ。同様に新宿の紀伊国屋、東京駅前の八重洲ブックセンターでも平積みだという▼もちろん、移民のことを書いた本が日本の書店に並ぶのは初めてではない。ただし、元々移民向けに書かれた邦字紙の記事が日本で出版された例はない。百周年を前に交流を盛んにするには、お互いを知ることが重要なのは言うまでもない▼ところが最近、日本で話題になるのは帰伯デカセギ逃亡問題に代表されるような犯罪や、デカセギ子弟教育問題が多い。これは日系人のほんの一断片であり、これで日系社会全部を判断されたら困るという声もよく聞く▼県人会関係者からは、母県の国際交流課の担当者は三年ぐらいでどんどん代わってしまい、その度にあらためて説明するとの話も聞く。学術論文のような難しい本ではなく、気軽に読める本が必要だとの声もきき、今回企画された▼これを呼び水に、さらに移民の本が続々と出版されることを期待したい。それが日本の取引先や関係者、親戚、友人に紹介され、少しでも理解を深めるような動きに発展すれば面白い。日本から一方的に情報を受け取るのでなく、こちらから発信する。それこそが相互交流だ。(深)
06/07/06