2006年7月5日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十三日】ブラジルにとってメルコスルは我が家であるが、米州自由貿易圏(FTAA)はどうでもよくなったと、ルーベンス・バルボーザ元駐米大使がいう。ブラジルはどっちつかずの状態でいるより、西半球共同市場に確固とした足場を築く必要があると考えていた。
米政府要人の一行が最近、FIESP(サンパウロ州工業連盟)を訪れた。その時一行は最後通牒とも取れる発言をした。FTAAは、NAFTA(北米自由貿易市場)やCAFTA(アンデス自由貿易市場)と同様の自由貿易協定を締結するなら、話し合いの余地があるというのだ。
この言葉は何を意味するか。まず第一に米市場への参入条件は、米政府の割当枠と関税制度に従う。米政府が除外する産物は、関税制度の対象から外す。第二にドーハ・ラウンド(新多角的貿易交渉)が指摘するアンチ・ダンピングや農業補助金に関する審査は、FTAAから除外する。第三がブラジルの公共料金に関する規定基準は、投資効率を優先するというもの。
米政府の横柄な要求はさらに続く。投資は輸出を含めて、ブラジルに対して経済的義務を負わない。ブラジルに資本投下をしなくても、自由に市場参入し営業ができる。市場参入には裁判権も伴う。
知的所有権は、世界貿易機関(WTO)で定めた有効期間をさらに延長できる。知的所有権の適用範囲は、新たなカテゴリーや対象物、要求事項、義務事項、監査方法などを拡大する。違反した場合の制裁事項と一五〇〇万ドル以上の罰金処分を明記する。
メルコスル加盟国には、このような商習慣はない。これは先進国が自国市場へ参入を挑む途上国へ要求するもの。だからブラジルにとってFTAAのメリットは何もない。
米議会内では時代に逆らって、国内産業保護の波が高まっている。従ってメルコスルが米国と対等な立場で交渉に望むのは、困難となっている。ましてメルコスルの得意分野と米国の不得意分野の対決は、まず望み薄と思われる。
米政府が独自判断で通商協定を締結できる米議会の委任期限が二〇〇七年七月に切れる。ブラジルは米大統領選前にいかなる通商協定の締結も困難だ。米国は内外で問題を抱えており、メルコスルにとって先行きの見通しは暗い。
米国が鉄鋼や靴、衣料、海老、エタノール、ジュース、煙草、砂糖などに制限措置を採る間、ブラジルには対米貿易のメリットはない。しかし、ブラジルは米国から総輸入の六八%を輸入する。しかもゼロに近い輸入関税である。対米輸出でブラジル製品は、メキシコやチリよりも原価が高く、輸出競争力で劣る。
四面楚歌の中で何がブラジルにとって大切か。まず急ぐべきことは、ブラジル周辺諸国と対米関税率を同率にすること。〇六年末までにメルコスル諸国が集まり政治を抜きにして、透明性の高い利害関係と対米戦略で歩調を合わせることだ。