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インフレ抑制で大統領再選=94年の立場が入れ替わる

2006年6月21日(水)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙二日】野党はルーラ政権を汚職政権と叫ぶが、説得力に欠け、有権者を納得させるに至っていない。野党は与党攻撃の矛先を経済に移してみたが、大統領選を戦うには内容が貧弱だとセウソ・ミング氏が苦言を呈す。
 大統領選に出馬するアウキミン前サンパウロ州知事(ブラジル民主社会党=PSDB)の言うことは、一般選挙民には難しくて飲み込めないようだ。労働者党(PT)政権の経済政策は、ブレーキを掛けたまま走る自動車だという。インフレにばかり気を取られて、経済成長や雇用創出を忘れていると訴えた。
 前政権の経済成長率は、PT政権より低く、インフレ率は高かった。こんな背景でPT教徒を改宗させることは困難だ。アウキミン陣営の論法にはもう一つ難点がある。インフレ抑制による政治的影響を理解していない。
 選挙を勝ち抜くためには、雇用創出よりもインフレ抑制が手っ取り早い。一般庶民の関心はGDP(国内総生産)にはない。容易に就職できて給料で生活ができれば、経済成長や雇用創出は意に介しない。二〇〇二年のインフレは一二・五%、〇六年のインフレは四・五%。給料の蒸発率は前政権より低くなった。
 ルーラ大統領は一九九四年にレアル・プランで泣かされた。同大統領側近は、レアル・プランをパラグアイ製のロレックスと呼んだ。二カ月は持たない選挙詐欺だと叫んだ。ところが有権者はPTの呼びかけに耳を貸さずレアル・プランを絶賛し、カルドーゾ候補に一票を投じた。
 ルーラ大統領にとっては、経済成長よりもインフレ抑制が金科玉条である。一九九四年の立場が入れ替わったのだ。アウキミン候補は、これまで訴えた宣伝文句の反響がイマイチである。経済政策で一ひねりできないのか。例えば、ブラジルを奈落の底へ突き落とした為替政策である。
 お祭り気分のPT政権は、為替が及ぼす重大性について分かっていない。輸出企業や農業生産者が被った為替差損による損害は、インフレで給料が目減りした比ではない。為替差損がブラジルの産業を空洞化させ、取り返しの付かない事態を招いている。この深刻な状況を、PTもPSDBも気付いていない。
 アウキミン候補もPSDBも、為替相場逆転のアイデアがないのか。基本金利の引き下げを叫ぶ同候補の考えは一理あるが時期を逸した。四・五%の引き下げを〇五年九月までに実施していれば、これほどの為替危機を招かなかった。現在は、米国の金融変動によるドル高を待つしかない。またはカントリーリスクが上がり、レアルが自ら下落するかしかない。
 野党は国民が納得するような経済政策を考案できないのか。十二カ月にわたったCPI(議会調査委員会)で与党揺さぶりに明け暮れたが、有権者を説得するには至らなかった。野党の頭はどうかしているとミング氏が酷評した。