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コラム 樹海

 去る二月、日本から音楽評論家の小西良太郎さんが来伯、サンパウロでの「世界アマチュア歌謡祭」を視察、審査員をつとめた。帰国してから、カラオケ専門誌にブラジル紀行を書いている▼小西さんは五木ひろし始め多くの歌手たちのプロデュースを手掛け、「美空ひばり『涙の河』を越えて」などの著書がある日本歌謡界の大御所の一人。歌謡のことなら何でも知っているような人が、ブラジルのカラオケの隆盛を不思議なものを見るように見た▼カラオケだけに言えることではないが「ブラジルの常識が日本の常識外」なのである。私たちは、日本のカラオケの現状を映像や書物でかなり知っている。だから、ブラジルが常識外なのもわかる。日本から初めてやって来た人にはその常識外が驚異でもあるのだ▼その日本では考えられないことのいくつかは、カラオケ大会の音出しが朝七時半(小西さんは、ゴルフじゃあるまいし、夜七時半と思った)、歌唱者が千人以上で二日がかりとなる、一つの大会が十七時間もかかる、日本語をしゃべれない人にも基本的に哀愁や郷愁のメロディーが好まれる、カラオケが遊びでなく真面目に取り組まれている――など▼そして、歌い手の新しい世代では混在するさまざまな民族の融合がすすんで、次なる「新しい混沌」がエネルギッシュに生まれている、と小西さんは観察した▼ともあれ、ブラジルに居れば、ブラジルのカラオケの世界がいとおしく、愛着が生まれてくるから不思議である。(神)

06/06/14