2006年6月9日(金)
デジタルTV選択に関する交渉がいよいよ大詰めを迎えている。グローボ、エスタード、フォーリャなど伯字各紙はそろって、二十一日ごろに日本から技術使節団が首都ブラジリアを訪れ、最終的な詰めをしたのち、二十九日には二階・経産大臣と竹中・総務大臣が来伯し、正式調印するとの予定を報じている。日本国大使館としても「日本方式を選択したとの確証が得られれば」としており、今まで丁丁発止の交渉のやり取りが紙上をにぎわしてきたが、「今度こそ」との期待感が高まっている。
七日付けグローボ・オンラインは「二十九日に日本の大臣たちがデジタルTV方式を公表する」との見出しで、二階俊博・経済産業大臣(和歌山県出身)、竹中平蔵・総務大臣(和歌山県出身)の来伯予定を大々的に報じた。大統領府での打ち合わせに出席した人物からの情報として伝えられたもの。
日本から二十一日ごろに先陣をきって使節団がきて詳細を詰め、二十九日に二大臣を迎えて正式な日本方式の発表、調印、大統領令の発布という見通しを伝えている。フォーリャ・オンラインもエスタード紙もほぼ同様の内容。
フォーリャにはエリオ・コスタ通信大臣が「すでに大筋では進んでおり、技術的な条件を調整している段階」とコメントした。
また、エスタード紙は「調印に向けた詳細の調整をするため、政府は使節団の到着を待っている」と書いている。加えて、四月に東京でアモリン外相、コスタ大臣、フルラン開発大臣らが署名した覚書の詳細を一歩詰めることをブラジル政府はこの機会に進展させたいという。具体的な内容として、日本からの技術の移転や、日本の銀行からの融資・投資を受けてインダストリアル・パーク(工業団地)の建設に関してだ。
加えて同紙には、ジルベルト・ジル文化大臣が五日、「決断は大統領選挙後にしないと正しい判断ができない」と事実上、欧州方式を弁護する演説をしたことに関して、コスタ大臣は「政府の見解でなく彼個人の意見」と批判した。
ニッケイ新聞の取材に対し、在ブラジリア日本国大使館、酒井了書記官は「大臣が来られるとすれば、あくまで日本方式が決定されたあとでしょう」とのべ、まずは〃確証〃が必要とした。せっかく大臣が来伯しても万が一、まだ欧州勢とのゴタゴタが続いており調印できない、となれば面目丸つぶれだ。
ただし、「総務省などの課長レベルや専門家による使節団が今月中旬に来伯することは、実際に予定されています」と認める。まずは専門家らが話し合って確証をえたあと、あらためて大臣来伯の日取りを決め直す見通しになりそうだ。
もし、大臣二人がいっぺんに来伯すれば初めてのこと。同書記官は「六月末から七月あたまは、翌年の財政基本方針を決める重要な時期ですから、二人はどうでしょうか」と疑問をなげかけたが、調印式が行われば、少なくとも大臣一人が来ることは間違いなさそうだ。
五月の中川農水大臣に続き、一年に二人来伯しただけでもかつてない要人往来だ。過去には移民九十周年で六月に故・小渕外相(当時)、同年十一月に真鍋環境庁長官が来伯した時以来、八年ぶりとなる。
残すは〃確証〃のみとなったデジタル選択。最後の詰めは、これからだ。