2006年6月7日(水)
【ヴェージャ誌一九五六号】ブラジル一般庶民の所得が短期に向上するよう開かれた唯一の窓はこれ。英国マッキンゼイ研究所のデイヴィス所長が処方せんを見せた。ブラジルが低率経済成長に留まるのは、すべきことをしないからだ。それはインフラへの投資とアングラ対策。これがブラジルの泣き所という。
ブラジルは全てが揃っている。無いのはヤル気だけ。中国とインドは経済成長に全てを賭けているのに、いつまでブラジルは惰眠をむさぼっているのか。次は同氏が指摘するブラジルの難点である。
最近のブラジルにおける経済発展は素晴らしいが、全般に効率が悪い。中国は莫大な数の貧困者がいるため、経済成長を達成しないと国家崩壊の危険があるからだ。中国政府にとって経済成長は至上命題である。インドも似た状態にある。両国がインフラに資金をつぎ込む努力は、ブラジルの比ではない。
ブラジルの失地回復のためにまずなすべきは貯蓄。次に法整備。第三に公共サービスの調整規準の制定、それ次第で外資はいくらでも入る。外資には生産的配慮が必要だ。第四に教育を含めたインフラ投資。第五に経営環境の整備と経営者の育成。
ブラジルには伝統的習慣で、底辺の人間を軽視する傾向がある。底辺にも優秀な人材はいる。インドは底辺の人材を起用し、米国へ留学させて成功した。帰国後、政府の要所で活躍し、経済活性化に向けた消費市場を構築した。
中国とインドは今後二十年間、経済環境と原料入手、資本財に異常が起きなければ、年間八%の成長を保つ。どこの国でも農業生産から工業生産へ産業形態が移行するとき、一二%や一五%の成長率で発展する。ブラジル経済が停止したのは、石油危機を克服できずに失敗したためだ。中国は石油暴騰を貯蓄で乗り越えている。
ブラジルは社会保障院の垂れ流し赤字を押さえ、教育とインフラへ投資すべきだ。教育と医療への投資は、一定期間を経ると効果が出てくる。
南米に見られる大衆路線の台頭は、まだ是非についてなんともいえない。現在まで大衆路線を旗印にした政権は、経済政策で失敗し短命であった。しかし、時代が変わり国際市場も変化した。国際金融は、今後のベネズエラやボリビア、ペルーを観察している。
今後の世界経済の見通しをいうなら、石油高騰に動揺せず順調に推移しているのは不思議である。心配は世界経済にリンクする米国の消費市場がいつまで安泰であるかだ。しかし、恐慌に至るような惨事はないとみる。ブラジルにチャンスの戸口は開いている。
ブラジルには人材と資源、安定した政治がある。ブラジルの経済成長率は、低いのが不思議な位。ブラジルは若者が多いので、来る二十年は有望である。ブラジルの成長の阻害要因は判然としている。あとは挑戦だけ。