2006年6月6日(火)
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙四日】連邦検察庁パラナ支庁は三日、同州より一九九六年から二〇〇三年の間に米国向けだけで二〇〇億ドルの違法送金が、為替業者六十四人によって行われたと発表した。外国への違法送金の捜査は、CC5(外国居住者口座)特捜班と連邦警察、検察官など多数の大規模合同班によって行われた。発覚したのは氷山の一角といわれ、全国規模では同期間に六三〇億ドルとみられる。違法送金される資金は、企業の裏金や汚職、脱税、麻薬の売上金。米検察庁が同時多発テロ以後、テロリストが違法送金ルートを利用するのでブラジルにも目を光らせていると特捜班がいう。
二〇〇億ドルは現在レアル通貨に換算すると、四四六億レアルに相当する。違法送金の主役は、外国との取引がある民間企業の裏金が圧倒的に多く、法人税申告に記載されない出所不明金だ。
年間で総額六六三億ドルと予測されるが、アングラ市場の実体は把握し難い。アングラ企業で販売伝票を発行せずに動く資金は、一兆レアルとみられる。その一〇%がヤミ為替業者の手に渡る。麻薬密売と汚職で動くヤミ資金は年間一四〇億ドルと推定される。
二〇〇三年五月に結団式がおこなわれたCC5特捜班は、外国向け違法送金の特別捜査班。旧パラナ州立銀行を舞台とした違法送金を審理したCPI(議会調査委員会)は、せっかくの労苦にもかかわらず、政治的成果は徒労となった。同CPIで唯一の収穫は、米検察庁の協力ルートを開いただけ。
二〇〇億ドルの違法送金も、米検察庁の報告書で判明したもの。報告書は、コンテナー一杯分もあった。九・一一同時多発テロ以来、米政府は不正資金の流れを追っている。特にブラジルを中心とした違法送金ルートをテロリストが利用していると米政府はにらんでいる。
CC5特捜班が注視するエリオ・ラニアード容疑者は、一人で同期間に一二億ドルを送金したとされる。送金はカリブ諸国の証券取引所へ投機形式で送る。投機資金は後日、ラランジャ(名義賃貸人)によって返送される。金融取引を装った送金である。現在は資金洗浄罪で有罪判決を受け、プラッハの刑務所で服役中。
為替業者の間には、ケーブル送金と呼ぶ送金法がある。銀行に足跡を残さない方法でブラジルから資金を外国へ移転する。為替業者多数が違法送金の容疑で告発されたが、異口同音に事実を否定した。送金はラニアードが一手に引き受けていたという。ラニアードが銀行を経由しない送金ルートをいくつも持っているのだ。
出稼ぎが留守家族へ銀行を通さずに送る送金方法と同じである。出稼ぎが渡したドル通貨は、為替業者Aの米国口座に振り込まれる。出稼ぎの留守家族は、為替業者Bから送金をレアル通貨で受け取る。為替業者は送金料やドル換金手数料を免除するため、送金者には魅力的で喜ばれる。
その代わり裏金や脱税資金を外国へ送金するブラジル企業から、為替業者Bが手数料をタップリ徴収する。為替業者Aは、資金をブラジル企業の口座へ振り込む。実際には金銭の移動がない。違法送金の立証もできない。