2006年6月2日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十一日】早期出産が流行の兆しとなっていることで、事態を重視した保健省は実態の把握に乗り出した。早産により体力がつかないまま抵抗力がなく、死や病気の大きなリスクを伴うからだ。この背景には医学の進歩と妊婦が一日も早く身重から解放されたいとの思惑が入り交じっているが、保健省では医療技術に頼り過ぎの過信だとして、やむを得ない場合を除き、なるべく臨月を待つよう指導していくことを決めた。早産によるリスクは児童肥満と並ぶ問題になるとみている。
保健省の手持ちの統計によると、一九九六年から二〇〇四年にかけて妊娠三十八週目以前の早産は全国平均で四・四%から六・五%に上昇した。とくに南部と南東部地方にこの傾向が高く、流行の兆しを見せている。ポルト・アレグレ市を中心とする南部では四・九%から七・三%へと上昇した。サンパウロ市を中心とする南東部では上昇率が二・六%から最高の七・四%になった。
ほかの地方では北部が五・九%から五・一%へ、北東部では六・五%から五・五%へと減少傾向を見せた。中西部では三・七%から六・四%へと上昇した。早産が減少した北部や北東部では自然分娩による未熟児出産が減少したことが原因となっているが、上昇した地域では帝王切開による出産が増加したためだ。
今では超音波(ウルトラソン)検査の技術の進歩で、予定日を容易に算出できるため、医師の第一回目の診察で帝王切開による出産日を決める人が少なくないという。暦を見て子供の誕生日を決めるのだ。
この背景には医師が週末や深夜の出産を避けるために予定日を決めて手術を決めてしまうのと、妊婦が出産可能圏内に入ると一刻も早く身重から解放されたいとの心理が動いている。さらに早産により子供が不調に陥っても、集中治療室での治療が進歩したことで安心感があるのも要因となっている。
しかし、専門研究グループやNGO(非政府団体)では安易な早産に警鐘を鳴らしている。ウルトラソンで三十八週を算出しても、実際は三十五週だったりすることもある。最後の二、三週間は胎内で抵抗力が増し、体重増加の重要な期間もあり、これがないため子供は病弱になりがちだ。このため呼吸不全などを起こし、生命の危機に見舞われる。
集中治療室の小児専門医によると、二十八週目に生まれた子は四十週目に比べ死亡のリスクが五倍高いという。死亡の原因はほとんどが呼吸不全と病原菌の感染とのこと。早産の子は抵抗力が少ないためだ。さらに死亡に至らないまでも未熟脳、腸弊害、失明やマヒのリスクも高い。
また七カ月で生まれた子は九カ月の一人前に発育するまでは予断が許さない。呼吸器障害になると、成長後も発病する危険性を備えている。以上から関係者は予定日を過ぎてからの出産は危険だとの概念を捨てて、安易に早産に走らず、自然に分娩が始まる四〇週目を待つべきだとの認識を強調している。