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人文研叢書「日系コロニア文芸」完成=コロニア短歌、俳句を知る好著

2006年5月31日(水)

 ブラジル日本移民百周年を記念、サンパウロ人文科学研究所が発刊している『人文科学研究叢書』の第四弾「ブラジル日系コロニア文芸(上巻)」がこのたび刊行、日系書店や人文研で販売されている。定価三十レアル。
 移民たちが生活のなかでその心情を綴ってきた短歌、俳句それぞれの世界を清谷益次(90)、栢野桂山(88)の両氏が解説、コロニアを知る必読の書となっている。
 「〝移民精神史〟への試み―短歌作品に汲むもの」の目次には、海、異種婚、勝負、出稼ぎ、老などの文字が並ぶ。
 日系社会に起きたあらゆる現象のなかで、移民たちはどういう思いで歌を詠んできたのか――。
 移住当時の十代、自分を表現する方法として短歌を選んだ清谷さんの深い洞察、分析を加えた移民の心のひだに迫る興味深い内容となっている。
 邦字紙などに発表された文章を中心に、今回さらに解説を加えた。「私の短歌人生の集大成。短歌に関係ない人にも読んでもらえれば」と清谷さんは話している。
 「俳諧小史」では、コロニアの俳句を支えた人々、句碑、歳時記、連句などを取り上げ、日伯俳壇の交流などにも触れた。「俳句全般の歴史をまとめたものとしては、初めてでは」と栢野さん。
 「自分の見たものしか書かなかった」。句碑は自らが現地を訪ね、俳誌も多数収集した。
 「コロニアの文化として、記録に残したい」という言葉から、その強い姿勢が伝わってくる。
 個人の俳句集、消えた俳句会の名称などもまとめられており、資料としても貴重なものといえそうだ。
 宮尾進人文研顧問は、「近日中に両氏出席の出版記念パーティーを開きたい」と話している。
 なお、「日系コロニア(下巻)」では、小説、詩、川柳などが取り上げられる予定。