ロサンゼルスに旅行した日系三世の青年が、英語力を高めようと、街に出て英語を使おうとしたそうだ。ところが、相手はスペイン語で応じてきた。意思交換はできたが、複雑な気持だったという▼最近、ロサンゼルスで六十数万人の「不法移民」の示威行進があった。「自分たちがいなければ、労働力が不足し、町の機能がマヒしてしまうゾ。差別を廃して米国市民と同等の権利を与えよ」ということを実力で示そうとしたのである▼今、米国には千二百万人の不法移民がいるといわれる。ほとんどが中南米から入国した人たちだ。本来なら不法なのだから、しかるべき措置、つまり国外追放するのが合法なのだろう。だが、追い出せない。追い出したら3K労働の担い手がいなくなるからだ。示威したように、街の機能が止まってしまうほどの存在なのである▼米国では不法ではあるが「移民」といっている。日本では、たとえば、ブラジル人が合法で労働力として入国しても、移民とはいわない。実体は移民であろう。帰国する、帰国できる余地を十分に残した移民である。定住ビザがもらえて、市民としての義務さえ果たせば、相応の権利を得ることができる▼日本側の実状をいえば、将来直面する労働力不足も国民生活を小さく安定させることにより問題はない、外国人労働力を増やさなくてもいい、という議論もある。デカセギたちはデモ行進はやらないであろう。その位置は、近い将来、おのずと決まって来るに違いない。(神)
06/05/12