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中国とは太刀打ちできない=奴隷扱いにもめげない国民

2006年5月10日(水)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙四月三十日】メーデーに寄せて中国の労働方式を観察した後、セウソ・ミング氏が次のような報告をした。中国は過去四年間、九%から一〇%の高度成長を保ってきた国。高度成長の秘訣は比較にならない程安い人件費だという。
 ブラジルでも大手企業が中国へ企業移住を行っている。中国が世界の人件費を引き下げていると言っても過言ではない。中国製品が世界の津々浦々浸透し、労働者の職を奪い給料を減らしている。ブラジルも例外ではないので、一考の必要がある。
 この記事を読んでいる読者の生活も、遅かれ早かれ中国の影響を受ける。あなたのサラリーは奪われ、あなたの職場も脅かされる。中国の労働法は一九九四年に制定された。中国の労働法は農村振興の延長線であって単なる参考に過ぎない。労働者の権利など微塵だに触れていない。
 法律よりも現実の生活がどうなのかだけが問題なのだ。例えば、労働時間は週四十時間と定められている。しかし、実際は七十時間が普通である。最低賃金は労働法に定めてあるが、単なるタテマエに過ぎない。労働法が適用されるのはほんの一部のエリート社員で、月収七〇ドルが相場。それ以外は、最低賃金などあってないようなもの。
 ミング氏が現地調査をしたところ、中国に十三億人の労働者がいて、七〇ドルの最低賃金を受け取るのは三億人である。あとの十億人は、餓死しない程度の給料で働いている。これが中国だ。ちなみにブラジルの最低賃金は、一七〇ドル。米国は八〇〇ドル以上。
 伯中弁護士協会は、多国籍企業の中国進出のため労働法の改正を求めた。しかし、中国の企業家はほとんど労働法など守っていないし、最低賃金も払っていないため大反対であった。
 ブラジルの労働法では労働者を採用すると、会社は厚生福利負担金や有給休暇、有給休職、十三カ月目給料、FGTSなど給料の一〇三%を負担する。中国の場合は、会社側の負担が五七%である。有給休暇は祭日を入れて十五日、十三カ月目給料やボーナス、FGTS、INSSなど全くなし。
 年金の掛け金は、給料の二〇%、医療保険と住宅基金が一〇%、出産保険と労働災害保険が〇・八%、失業保険が一・五%。解雇は二〇年間、理由のいかんを問わず即時クビ。労働者は虫ケラ同様であった。しかし、最近少し変わった。
 中国の労働者は給料が安いが、購買力はバカにできない。社会主義制度により最低限の食料、医療、教育、住宅は無料となっている。企業は従業員に最低限の住まいと食事を供給する。労働条件はブラジルと比較したら奴隷扱いだが、不平をいわない。若者らは結構楽しそうだ。
 労働争議や抗議運動が起きるのは、農村部だけのようだ。しかし中国の国際競争力は単なる超格安の人件費だけではない。複雑な要素から成り立っている。ブラジルより遥かにインフラが整備されていることだ。それに膨大な国内市場を抱えていることも強い。