2006年5月9日(火)
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙八日】ボリビア政府のサウヴァチエラ農相は七日、ブラジル人農業生産者が同国に所有する農場を接収する法令原案をモラレス大統領に提出したことを明らかにした。接収対象は国境から五〇キロメートル以内にブラジル人が所有する二〇〇カ所の農場一四〇〇万ヘクタールとされ、ボリビア領土の一一%に相当する。生産者らは現在、同地域で大豆を栽培している。ボリビアでは一〇〇家族のブラジル人が、同国の大豆の三五%を生産する。生産拠点をボリビアに移したブラジル人農業生産者らは、ボリビアの国籍取得手続きに奔走中である。
ペトロブラスの施設接収に続いて、ブラジル人所有の農場接収がモラレス大統領のサイン待ちとなっている。ボリビア政府が押し進める農地国有化政策は、国境に隣接するサンタクルース県に散在するブラジル人所有地や、正式な土地取得手続きが済んでいない全国の大豆農場などに及ぶらしい。
農地接収案は八項目からなり、農地取得手続きに何らかの手落ちがあれば接収となる。ボリビアの法律では、国境から五〇キロメートル以内は外国人による土地所有が禁じられており、ブラジル人の土地は全て没収の対象となる。
ボリビア政府はブラジル人所有地を没収後、ボリビア先住民や土地未所有の農業生産希望者に分譲する。同国の経済社会政策の意図に沿っていることと、土地取得に手落ちがなければ、政府は農地の所有権を法的に保障するという。
ブラジル人所有地はペルナンブッコ州とほぼ同面積であり、農地改革によりボリビア人口の二七%に当たる二五〇万人へ分譲する計画のようだ。同農場接収案は、大統領が関係者を呼んで最終検討を行う。
同農相は、同案が多国籍企業や外国人グループの土地取得に門を閉ざすものではなく、農地国有化政策の一環で不正取得を取り締まり、農地を持たないボリビア人に没収地を分譲するものだという。不動産登録制度があいまいだった時代に取得した農地は、全て不正取得の対象になる。
ボリビアに移住したブラジル人には、二つのタイプがあるという。一は、借地農で入植し大豆栽培を営む。二は、木材の不法伐採やゴム、ナッツ採集で密輸を行い、土地は一定期間の管理権を主張した後、占有権を取得する。
ボリビア政府の見方では、ブラジル人借地人が生産手段ではなく、転売の対象とした農地も接収令の対象となる。経済社会政策で生産地域と自然保護林の指定地域が定められており、指定条例の違反も接収の対象になる。これは国家主権の適用なのだそうだ。
ルーラ大統領が後押ししたモラレス政権が一連の国有化を公約したことで、ブラジル人らは国籍取得の手続きを半年前から始めていた。モラレス政権による矢次早の改革に息つくひまもなく狼狽している。
ブラジル人のボリビア移住は一九九〇年、肥沃で安価な土地に魅せられて広まった。多くは、パラナ州とマット・グロッソ州出身者であった。所有者不明で放棄された土地に入植し、十年以上耕作していたブラジル人生産者も多い。