ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | ガス供給への懸念広まる=困難な2国間調整=大統領と関係者の発言に齟齬

ガス供給への懸念広まる=困難な2国間調整=大統領と関係者の発言に齟齬

2006年5月9日(火)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙六、七、八日】ボリビア政府が石油やガスの天然資源を国有化宣言したのにともない、ペトロブラス(石油公団)の天然ガス生産施設も接収されたことを受けて、ブラジル国内ではガス供給に対する懸念が広まっている。
 ルーラ大統領は五日、一般消費者向けの供給不足および値上げは一切あり得ないと強調、たとえボリビア側が値上げを敢行してもペトロブラスで吸収して一般消費者には価格転嫁はしないと明言した。
 しかし関係筋はこれに対し、当のペトロブラスが値上げに強硬な姿勢で挑む態度を打ち出しているのと、ボリビア政府のなりふり構わぬ強硬態度から二週間で調整がスムーズにまとまらず、不透明な情勢は短期的に解決できないと、不安感をぬぐい切れていない。
 こうした中、ガスを燃料としている企業は原料の代替の検討を始めている先もある。ブラジリアでは自動車燃料としてガススタンドを六月から始めるべく準備を進めていたが、無期限に先送りにすることが決定された。サンパウロ市ではガスエンジンへの変換が一日に四〇車を超え、変換工場は二週間先まで予約で埋まっていたのが、ここにきて注文が途絶え、ゼロに落ち込んだ。 こうした折、ボリビアのモラレス大統領は七日、ガス価格をBTUS(英国基準国際ガス取引単位)当たり二ドル値上げすると発言した。ブラジルとアルゼンチン向けに適用するもので、ブラジル向けはこれまで三・二六ドルだったため、六一・三四%の値上げとなる。
 これに対しペトロブラスは強硬に反発、大幅値上げは認めないとの声明文を発表した。折り合いがつかない場合は国際裁判に提訴することもやぶさかではないとの態度を見せている。これにはアモリン外相を始めとする鉱山エネルギー相など閣僚も支援する動きを示している。
 価格調整は十日からラパスで、二国間の閣僚や関連企業により行われるが、モラレス大統領の発言はボリビア側関係者にも寝耳の水で驚きをもって迎えられている。ボリビア側は三ドルの値上げから始めて一ドルまでの間で妥協する腹づもりだったことから大統領発言が先行した形となった。 これに対しルーラ大統領は、南米国内では強者が弱者を擁護するのは当然だとしてボリビア側の出方を容認する姿勢をみせている。先週の四首脳会談で全く発言せず、腰砕け外交と批判されたルーラ大統領は一向にひるまず、強硬手段を取るより友好外交が実り多いとの認識を強調している。
 しかしアモリン外相を始めとする外交ルートは、ボリビアの言いなりにはならぬとの姿勢を崩しておらず、大統領の意向と摩擦を見せ不協和音を奏でている。またルーラ大統領が今後もペトロブラスを通じてボリビアに引き続き投資を行うと明言したのに対し、ペトロブラスのガブリエリ総裁は声明文の中で、今のところ投資継続はありえないとし、大統領の意向を真っ向から否定した。
 専門家によるとブラジルのガス埋蔵予想量は八八〇〇億立米に達し、向う五〇年間の国内消費に相当するという。ただ石油投資が先行したことでガス発掘が遅れており、現在の自給はボリビアからの輸入量の半量に満たず、今後の投資が課題となる。