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コラム 樹海

 日系の友人が最近、カンピーナス市のボッシュ社に就職した。ドイツ進出企業で、世界の電動工具の技術革新をリードしてきたパイオニア的存在だ。彼女の第一声は「みんなドイツ語しゃべるのよ」だった。工場の現場も含め、ブラジル人現地社員の多くがドイツ語をしゃべることに驚いたようだ。社員は五千人ほどいるが、共通言語は英語とドイツ語だという▼同社サイトによれば進出したのは一九五四年と古い。九カ所に工場を持ち、〇四年の売上げは四十三億レアル。現在のコラボラドーレス(間接・直接社員)は一万三千八百人を数える▼友人はかつて、アメリカ進出企業やユダヤ系銀行にも勤めていた。「アメリカ系企業は個人主義が強くて、自分が、自分がという雰囲気が強かった」と振り返る。自分の業績を挙げるためには手段を選ばないとも。その点、ドイツ系は「時間に正確で、組織的な動きを大事にして、きちんとしている感じ」と日系人として居心地がいいという。他にも技術者などで日系人がたくさんいるとか▼十月のオクトーバーフェスト(ビール祭り)で有名なSC州ブルメナウ市は、ヘルマン・オットー・ブルメナウというドイツ人医者が州政府と土地の契約をし、十八人のドイツ人コロノ(農業労働者)からはじまった。現在は二十五万人都市に成長し、ドイツ文化を売り物に毎年六十万人もの観光客を集める▼文化の継承と発展の両立――は難しい命題だが、そこにこそ、外国に暮らすものならではの工夫のしどころや面白さがある。その過程でどんな日本式や日本風が生まれるか。それもまた楽しみだ。(深)

06/05/04