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高齢者集合住宅の暮し=連載(上)=所持品処分も待遇に満足=対象はまだ上流階級

健康広場

2006年5月3日(水)

 第三世代を対象にした集合住宅(ホテル・フラット)の需要が増えてきている。看護体制を整備したり、健康促進プログラムを提供するなどして高齢者を支えていこうというもの。住人は自主性を維持しながら、生活することが可能だ。家賃はかなりかかるものの、一世高齢者に焦点を当てるなら、コロニアでも歓迎されるだろう。後回しになった百周年記念事業案の四大プロジェクトの一つにも、同様な計画が提出されていた。「レビスタ・ダ・フォーリャ」(四月二十三日)が、高齢者集合住宅について紹介している。いったい、どんなところなのか?
 「ソラール・ド・マルケス」(イジエノポリス区)の火曜日は、高齢者向け水中運動の教室でスタートする。朝は早く、肌寒い。同区周辺で人気の高い教室で、同年代の隣人たちがフラットを訪問。温水プールの中で浮き棒を使って、リラックスしている。
 「授業を受けたくてしかたなく、もう水着を買っちゃいました」と、アウダ・デ・パイヴァさん(64、リオ出身)。エウドラド・ホテルが営業していた場所に昨年九月、高齢者向けコンドミニオがオープンした。パイヴァさんは定住者六人のうちの一人だ。
 サングランス、ネックレス、ピアス、金の指輪、木靴、バラ色の口紅……。パイヴァさんは、全身を着飾っている。「同様の問題を抱える、同年代の人と会話できること」と老人向けホテルのメリットを言い切った。
 夫のフェルナンド・ピント・ゴメスさん(72)は、フラットの職員に車椅子を押してもらいながら散歩をしていた。居室の掃除が終わるのを妻が待っている間、ジムや温水プール、屋外をみて回る。
 糖尿病が原因で一月に、リオ市内の病院で右足を切断。「ソラール・ド・マルケス」に移ってきた。「サンパウロは医療のレベルが高いし、ここにはロシア系ユダヤ人医師がいる」(アウダさん)。ホテル内では、看護婦三人が交代でゴメスさんについている。
 老人向けホテルは、ドイツやフランスのような欧州諸国で一般的。特に米国では、三万五千軒に計八十万人の高齢者が宿泊している。サンパウロ市では主に、「A」「B」クラス層を対象にしたもの。〃家賃〃は一人、四千二百レアルから六千レアルに達し、夫婦ならもっと高い。
 住人は住み慣れた邸宅や広いアパートを離れてきた、六十歳~九十歳の夫婦や未亡人(寡)たち。自立者も半介護者もいる。ホテル(フラット)が、彼らの需要を満たす。
 高齢化にあわせて、この三年間で四つ住宅(ホテル)がオープンした。先駆者の一つは「レジデンシアル・サンタ・カタリーナ」(家賃・五千レアル~六千レアル)だ。二〇〇〇年七月に営業をスタート。この四年間に稼働率は、四〇%から八〇%に倍増した。
 マリア・ルイーザ・マルチンス・カンポスさん(80、定年退職者)は週末、自宅の壁に絵画をかけようとした時に後方に転倒した。「もっとひどい状態だったら、家政婦が月曜に来るまで、床に倒れていたかも……」。
 一週間の体験入居後、二百八十平米の家屋から四十二平米のアパートに移ることを決意した。価値のある所有物のリスト(三百点)を作成し、子供たちに好きなものを選んでもらった。
 家具や食器、陶器など約八〇%は子供に分け与え、残り二〇%は、販売もしくは寄贈した。「子供の家を訪れると、居間の隅に揺り椅子が置かれていたり、食器類がテーブルの上にあったりするのを、いつもみられます」。  (つづく)

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