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農業不振の原因は?=求められる情勢変化への対応

2006年4月26日(水)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙十九日】二年前はわが世の春を謳歌していたアグリビジネスが二〇〇六年、ケン(さとうきび)とコーヒーを除いて価格低迷と投資離れ、赤字経営のサイクルに引き込まれた。なぜ農業環境はこうも激変するのかと国際貿易研究所のサワヤ・ジャンク教授が問題提起を行った。
 農業の長期展望を見ると、アグリビジネスは基本的に国内供給と海外需要で成り立っている。この構造に対応できる体制に切り替えることが成功につながる。供給面で見ると、熱帯農業に適した農業技術の開発と調査への投資から成功が約束される。
 大学や農事試験場の努力で酸性土壌の改良や大豆の遺伝子組替え、稲や綿の品種改良、直播栽培、農薬の研究、機械化農業、ハイテク農業、牧牛の改良などで見るべき成果があった。また農業生産者も、経営技術を学んだ。面積当たりの生産性でブラジルは世界の最高水準にある。
 需要面をみると、東アジアやロシア、東欧、中東など途上国の消費が増えている。これには過去二十年間、三つの現象が起きている。一、これら途上国で個人所得が向上し、低所得層が減少した。二、都市化が急速に進み、生産者が消費者へ回った。三、植物性タンパク質から動物性タンパク質へと食文化が変化した。さらにバイオエネルギーの需要はブラジルにとって幸運というしか言いようがない。
 では、農業不振の原因は何か。原因はブラジル自身にある。世界情勢に対応できずに生産が偏り、悪循環を引き起こす様子は自殺行為に等しい。第一の自殺行為は為替率だ。一九九四年から九九年の愚を繰り返している。
 第二は、インフラである。国際市場で今後も有望視される農産物は、穀類と牛肉、繊維、乳製品であり、どれもセラードの特産物である。しかし、輸出向け物流のインフラ不備で、FOB(本船積込み渡し)価格の四〇%がブラジルコストになる。
 第三は農業政策の不在と資金難である。衛生設備と農業保険、為替ヘッジ対策、バイオテクノロジーが資金不足で後手になっている。反面、MST(農地占拠運動)対策や農地改革などに資金が食われている。長期的に見てMSTは、浪費と思われる。
 コモディティ(必需品)分野に従事する農業生産者は、国際相場と取引量が乱高下するので、リズムの合わせ方を勉強する必要がある。政府は国際情勢に合わせマクロ政策を調整するのが伝統的に下手である。ブラジルは、時期的サイクルや心理的サイクルに対して政府当事者がうとい。