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シリーズ日本人=連載(1)=心にレンズを向ける――関谷巌弁護士(60)

2006年4月19日(水)

 ブラジルに所縁のある日本在住の有識者を、ニッケイ新聞の藤崎康夫東京支社長がインタビューする新企画「シリーズ日本人」。不定期連載で、関係者の声を伝える。

「慶応大学は、ブラジルとの交流があるのです」
慶大法科出身の関谷さんは、レセプションの席上で、両国の法律について語り合った日のことを思い浮かべる。
 関谷さんは、第一線の法律家であると同時に写真家でもある。
「日本は人の言動を大切にしてきましたが、今は、証文が第一という時代に変わってしまいました」と語る。
 心が荒みがちのこの時代、自然と共に暮らす寒村や「仏の世界」にレンズを向ける。関谷さんは、東大寺の長老・清水公照師の講演を聞き、師の四国遍路を撮ることになり寺院を訪ね、仏像に接し、「人の心の世界」触れた。
 二〇〇〇年の晩秋だった。村興しをしている友人からの話から新潟県の山村・高柳地区(現・柏崎市)の撮影に取組んだ。月に一回、金曜日に仕事を終え、日曜日までを撮影日にあてた。豪雪から農作業などを取り続けた。
 ほぼ同時期、ミャンマーの撮影に入った。
「僧院で五〇〇人もの僧が試験を受けていました。
シャッターを押すのをためらっていると、せっかくきたのだから、撮っていきなさいといわれました」
 ミャンマーの人びとの心は温かかった。それから度々、同国を訪れ各地を回った。
 町では、どこでも托鉢の子供の出家僧を見かけた。早朝、揃ってお寺参り行く一家。家族と共に畑仕事や子守りをする子供たち。子供の生き生きしている姿が印象的であった。
雨期の川幅の広さには驚いた。自然の大きさの前に意気を飲んだ。
 ミャンマーで撮影した写真で二〇〇二年夏、『遊行』のタイトルで写真集を出版し、写真展も開いた。
 そのことで、当時ミャンマーの宮本雄二大使の勧めで、ミャンマー写真家協会の協力を得て、ヤンゴン市街のシュエダゴォンバゴダ(「聖なる仏塔」)で外国人として初めて写真展を開いた。開会式には小野田展丈大使らも参加。この日だけでも一万五千人。一〇日間で十万以上の人びとが鑑賞した。仏像の写真に向い、長時間手を合わせる人びとの姿が印象的であった。
 関谷さんは、「法」と「心」を見続ける日々である。
(せきや・いわお=弁護士)