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日系子弟として強い意識=「日本語習得は当然だ」――イグアスー移住地の高校生たち=教育の賜物、「恥」を知る

2006年4月4日(火)

 パラグァイ国イグアスー移住地にある日本語学校高等部では、二十七名の生徒が夢と目的意識を持って日本語習得に励んでいる。表情が明るいのが印象的だ。日本語学校は、移住地の市街地の真ん中にある。移住地が始まった二年後の一九六三年九月に開校した。
 高等部の生徒たちは自分たちのふるさと(故郷)の歴史を祖父母や両親の口伝が頼りの移住地生まれの二世・三世だ。このため、〃ふるさとイグアスー〃の歴史も日本語習得の中で正しく学ぼうとしている。
 〃我がふるさと〃の歴史を知り、やがて自分たちの子孫たちにそれを伝承する大切な「語り部」の役割も担おうという意欲の表れだ。来訪者に対して、また訪問先で、〃我がふるさと〃の歴史を誇りを持って躊躇なく説明することも大切だ、と自覚している。
 今年の高等部の担任は小原和子さん(岩手県出身)。「先生になるのが夢だった。それが叶えられて嬉しい。努力は報われるもの。くじけずに何事にも挑戦することを生徒たちに勧めたい。そして、基本は道徳を守ること、責任を全うすること、ね」と言う。
 その先生の前で去る三月二十五日に夢を語ってくれたのは、一年生の原三佳、矢島かおり、二年生の大山巌、名倉道也、福井美穂、佃あゆみ、三年生の三浦幸二、原太司、奥田百美、井上アキ、の十名だ。
 「日系人として日本語を知らないと恥になる。正しい日本語、丁寧な日本語を学びたい」という共通意識が鮮明だった。『恥』を知る若者に育っているのは教育の賜物であろう。
 もう一つの共通の夢は、卒業したら祖父母や両親が生まれた「日本に行く」ことだ。
 日本で学んだり働いたりして自信をつけて〃ふるさと〃イグアスに戻り、子供たちにスポーツの指導をしたい(大山巌さん)、
 日本風を取り入れた建築をしたい(名倉道也さん)、
 介護の仕事をやりたい(矢島かおりさん)、
 日本文化を教える教師になりたい(福井美穂さん)、
 経理の仕事がしたい(佃あゆみさん)、
 幼稚園の保母か学校の先生になりたい(井上アキさん)、
 自分に合う会社を興したい(原太司さん、原三佳さん)、など夢は豊富だ。
 車が好きなので、その分野に進みたい、と言うのはすでに日本語一級に合格している三浦幸二さんだ。
 「子供の頃から花屋さんになるのが夢だったの。丁寧な日本語での接客マナーを磨きたい」(奥田百美さん)という夢もある。
 イグアスー移住地は今年が入植四十五周年だ。近未来の中堅たちは活動分野の選択肢を広げながら、祖父母や親たちが築いてきた〃我がふるさと〃に日本の文化を継承しようという強い意欲を秘めていることを感じた。
 その表れの一つが日本語習得熱だ。「モノ怖じしない、自分の意見を率直に表現できる人間に育って欲しい」気持ちでこれら高等部生たちの学習姿を見守っているのは堤和子校長(青森県出身)。
 広大な大豆畑と自然いっぱいの環境に包まれて明るく育っている若者たちはしあわせだ。(渡辺忠通信員)