2006年3月30日(木)
デジタルTV方式の交渉に関して、主要閣僚六人が四月九日ごろに訪日することが明らかになった。半導体や液晶TVの工場誘致など大規模な投資案件を話し合うためで、ジウマ・ロウセフ官房長官、セルソ・アモリン外相、セルジオ・レゼンデ科学技術相、ルイス・フェルナンド・フルラン開発相、エリオ・コスタ通信相が参加する予定。新財相に就任したばかりのギド・マンテガ氏かその代理も加わるという。使節団は韓国にも立ち寄る。これだけの閣僚が訪日するのは、昨年のルーラ大統領随行団以来で、日伯関係の活発化に期待が高まっている。
二十九日付けエスタード紙によれば、コスタ通信相はデジタルTV採用方式をめぐる問題について、三十日に行われる九閣僚が参加した特別委員会で調査の結論を出し、ルーラ大統領に提言すると発表した。同相は、訪日前に方式決定する可能性にも言及。決定してから訪日するのか、訪日した成果を参考に決定するのか。大統領の判断にゆだねられそうだ。
今回の訪日は、先週から同通信相がマスコミに語ってきたが、二十九日午前現在で、在伯日本国大使館に正式な通知は送られていない。
ブラジル主要閣僚の大半が参加する使節団になるだけに、正式になれば、対応する日本側閣僚とのスケジュール合わせなど大使館は調整に追われそうだ。
地上デジタル放送の方式の候補は日本、米国、欧州連合の三つ。日本政府は国を挙げて取り組んでおり、既報の通り、堀村隆彦大使も積極的に交渉している。関連技術の著作権料免除、国際協力銀行(JBIC)から関連インフラ整備に五億ドル(約五百八十五億円)規模の融資をする意向を伝え、説得を続ける。
「日本方式に決まれば、日伯経済協力がハイテク産業に移行したという非常にシンボリックなものになる。百周年にとっても意義が深い」。在ブラジル日本国大使館の大竹茂公使は熱心に語り、強い期待をにじませた。タイミング的に百周年と重なることから、日伯経済交流の目玉になりそうだ。
当初は技術的に優れた日本方式が有利と報じられてきた。その後、「日本方式を採用したら輸出できなくなり世界から孤立する」などとする欧州連合の六大使が説明に赴き、欧州企業が投資を明言するなど強烈な巻き返し工作が展開されている。
ブラジル政府は、半導体や液晶などの工場誘致を交渉条件にあげ、産業構造を変革させる契機となるような大規模なハイテク投資を求めている。
これに対し、日本や欧州の多国籍企業からは、半導体工場などには十~二十億ドルの巨額投資が必要となり、それ相応の道路や港湾設備などのインフラ整備がまず必要と疑問視する声も出ており、いまのところ実現は難しいようだ。
二十三日付けなどの主要各紙には、民放主要十局が日本方式を支持する異例の一面広告を出すなど国内からの圧力も激しい。選挙の年だけに、マスコミに嫌われたくない心理も働くと見られ、最終的にはルーラ大統領の「政治的な判断」で決断される。
すでにアルゼンチン政府はブラジルの決定を参考にすると発表しており、今回の採用はメルコスール全域に影響を与える。テレビ受像機のデジタル対応新機種への買い替え需要は十年、十五年かけて徐々に進むとみられ、国内電器業界への影響は莫大だ。
日本政府もソニー、パナソニック、東芝、NECなどの民間企業と足並みをそろえ、自国外での初採用を目指して粘り強い交渉を続ける意向だ。