2006年3月29日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十八日】パロッシ財務相は二十七日、連邦貯蓄銀行のマトーゾ総裁が口座無断開示と財務相への明細書提出の責任を認めたことを受けて辞任した。これらの工作は、財務相の偽証をCPI(議会調査委員会)で裏付けた邸宅管理人を窮地に追い込むためのものとみられた。大統領は二十七日、政策委員会を招集し、財務相の辞表受理と後任にマンテガ社会経済開発銀行総裁の起用を決定した。財務相に続いてマトーゾ総裁、ポルトガル財務次官も辞任した。新財務相は中央銀行の通貨政策に批判的であるため、金融市場が今後の成り行きを懸念している。
二週間にわたった前財務相の偽証論争と口座の無断開示は、邸宅管理人に軍配が挙がったようだ。管理人がダビデなら、前財務相はゴリアテになぞらえられる。パロッシ財務相の辞任は、ルーラ政権最大の痛手とみられる。
PT政権の誕生で大衆迎合と無責任な経済政策が噂された国際金融市場へ鎮静剤を投じて国際信用を回復し、内外から健全財政を絶賛されたのはパロッシ前財務相であった。そればかりでなく、党内の政策批判に対しても孤軍奮闘した。
国際信用の回復による外資の流入で、PT政権は財政面で恵まれた。二〇〇三年と〇四年の財政は国家の士気を高めた。ポスト・ルーラでは前財務相と前官房長官はライバル同士であった。前官房長官失脚の発端になったのが、サントアンドレ事件であった。
大統領の女房役となった前財務相にも陰りが見え始めた。〇四年の高金利政策。〇五年のリベイロン・プレット時代の不正暴露。ロウセフ新官房長官による財政黒字への歯止め。パロッシ前財務相も元部下の不手際を巡って、ジルセウ氏の轍を踏んだようだ。
財務相配下によるボス救援策は全て裏目に出た。連邦警察の供述でマトーゾ前総裁は、口座明細を財務相に渡したことを自供した。口座の無断開示は、六年以下の禁固に科せられる。前総裁の供述は、前財務相を始め多くの関与者を芋づる式に地獄への道連れとするもの。
財務相辞任の報に接した管理人のコスタ氏が、政府の圧力を受けた脅迫の二週間を回顧した。綱は弱いほうが切れるが、弱いのは自分ではなく偽証をした者だったと語った。最高裁によって口を封じられ、雑誌エポカが管理人の犯罪示唆を報道し、連警捜査員が管理人の友人や出入りする店を徘徊したときは自暴自棄になっていたという。
パロッシ前財務相を引きずり降ろした野党は、これで政治危機が解決したわけではないと警告した。政府宣言の裏金疑惑の不正解明は、五里霧中だという。影武者を仕立てては大統領の身代わりとしお茶を濁す間は、大統領自身の責任追求もあると恫喝した。
財務相の後任に指名された社会経済開発銀行のマンテガ総裁は、財政黒字の経済政策を優先するものの、パロッシ路線ではなくルーラ路線になると述べた。経済スタッフの交代も発表した。在任期間はわずか九カ月間であるが、基本金利を年利七%にする考えらしい。ただ、ウオール街は新財務相を歓迎していないようだ。