2006年3月24日(金)
サンパウロ市で現在、地下鉄四号線の建設工事が進んでいる。今年一月に終了したチエテ川改修事業と同じく国際協力銀行(JBIC)からの融資を中心に実施されている事業だ。区間はルース駅からビラ・ソニアにいたる約十三キロ。日本移民百周年にあたる二〇〇八年の開通を予定している。完成後は一日九万人の利用が見込まれる、サンパウロ市民の新しい足。その開通が待たれるところだ。十六日、JBICが実施した視察ツアーに本紙記者が同行した。
工事敷地に入るといきなり、直径十数m、深さ三二mの巨大な縦穴が地下へ伸びていた。工事部長のマルコ・アントニオさんに連れられ、エレベーターで穴底に下り、トンネル掘削の現場へ向かう。滴り落ちる水と土埃。坑内は熱気に包まれていた。
十六日の視察ツアー。一行を乗せたバスはJBICリオ事務所の相川武利さん、尾頭寛さんとともに、サンパウロ市コンソラソン通りの中ほどにある工事現場を訪れた。
地下鉄四号線(黄色の線)の区間はルース駅からビラ・ソニアにいたる全長十二・八キロ。パウリスタ大通りからピニェイロス川を渡りモルンビーに向う路線で、既存の地下鉄三線、二本のCPTM線と交差する。開通がもたらす影響は大きい。
工事は〇八年十一月をめどにした一期工事で、線路の開通と、ルース、レプブリカ、パウリスタ、ファリア・リマ、ブタンタン各駅の開業を予定。二〇一二年までの二期工事で全線を開通する計画だ。開通後は、既存の地下鉄、CPTMなどの近郊通勤者約九万人の利用が見込まれている。
サンパウロ州政府の要請を受け、日本政府は、民間銀行団による貸し付けを保証する海外シンジケートローン保証の形式で約二百八十六億円の資金協力を実施。〇四年から工事が始まっている。
四号線のトンネル工事は、円筒状の掘削機で掘り進むシールド工法と、掘った後にコンクリートを吹き付け、ボルトで地盤を固定するNATM工法の二本立てで行われている。
トンネルの直径は通常八mだが、この部分は六本の線路を引いて列車の入れ替えを行うため、十八mと広めになっている、とアントニオ部長が説明する。
現在市内二十七カ所の現場で工事が進んでおり、二千人が働いているという。「二〇〇八年十一月には第一期工事が完成します。十二月には開通の予定です」と部長は説明。今年八月に一日十一メートルの掘削が可能な機材を導入することを明かし、開通に自信を見せた。
始発駅となるルース駅の現場では、さらに広い直径四十mの縦穴の中で作業機械が動いていた。この穴を三つつないで駅を建設するそうだ。
今は工事車両が動き回る駅予定地。以前は商店やホテルがあったが、工事開始にともない立ち退きとなった。歴史的建築物として解体を免れた家屋が敷地の片隅に残っている。
工事完成後、地表は広場として利用する予定。サンタクルスやタトゥアペ駅などのような商業ビル建設も考えられているという。