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エイズ患者増加=高齢者=広報活動の対象外=性生活は今だ禁句=誤解や偏見に苦悩

健康広場

2006年3月22日(水)

 ここ数年上昇率がゆるやかになってきたものの、五十歳以上のHIV感染者数は年々増加傾向にある。高齢化にともなって性生活が維持される一方で、これらの世代が一般的に広報活動の対象外とされるため。必要な情報に欠き、コンドームの使用などについて誤解を生んでいる。さらに第三世代の性を語ることは今だタブー。HIV感染者が家族などに相談しにくい状況に置かれている。
 イネース・フェレイラさん(仮名、58)が三十年間の結婚生活後に離婚。その後、十歳年上の男性と五年近く付き合った。交際中にこの男性は、胃に重い病気を持っていると言って医薬品を服用。病院にもしばしば通っていた。
 服用薬のラベルを取り替えられていたので、イネースさんは彼が死ぬまで病名が分からなかった。「娘が死亡診断書を読んで、エイズ患者だと知った。私はショックでうつ状態に入りました」。検査で彼女自身も、HIVウイルスの保持者だと判明した。
 極度の落ち込みから、八日間、ベッドから出ることができず、物事をする意欲を失ったという。健康雑誌『VIVA SAUDE』が先ごろ、熟年女性のエイズ患者に典型的に起こっている例だとして、イネースさんを紹介した。
 DST/aids国家プログラムの統計によると、HIV感染者は一九九三年~二〇〇〇年のまでの間、五十歳~五十九歳の年齢層で八百九十人から二千六百八人(約二・九倍)、六十歳以上の層で三百三十九人から八百九十八人(約二・六倍)に増えた。
 性別では男性の増加が特に顕著だ。五十歳~五十九歳では、女性が一七〇%増に対して、男性は四七四%増、六十歳以上では女性が二〇三%増に対して男性が五七三%増の伸び率を示している。
 第三世代の男女は青年時代に、現代っ子とは異なる社会規範で行動した。特に性生活において、両者の差異が大きい。かつては低年齢で結婚。女性は処女性が称賛を受け、そして求められた。エイズウイルスが発見されていない時代のことだ。
 八〇年代にエイズ感染が広がると、病気の流行を阻止するため性についてオープンな形で議論がされ始めた。予防キャンペーンの対象者は当初、同性愛者や娼婦、麻薬常習者で、感染者数の拡大に伴って一般のカップルや独身者が加えられた。
 ジーン・カルロス氏(感染学者)は「高齢者向けの啓蒙活動には、力が入れられてこなかった」と指摘する。エイズは若い世代の病気で、第三世代とは無関係だと考えられたからだ。
 しかし社会の高齢化や医療技術の発達とともに、性生活も継続。未亡人などを対象にした、バイレやお見合い会なども企画されている。つまり第三世代の人が恋愛してセックスする機会が増えた。と同時に、エイズにかかるリスクも高まったわけだ。
 望まない妊娠をする可能性が低いため、女性は避妊対策をしない。男性のほうは、勃起しないことを恐れてコンドームの使用を渋る。
 夫婦の場合、夫が婚姻外関係から感染。妻に移す危険が問題化してきている。長年連れ添った夫に向かって今さら、妻はコンドームを使ってくれとは言い出しにくい。
 ブラジル社会にとって、第三世代の性はまだタブー。高齢者のエイズは、本人だけでなく、家族や一部の医者を驚かせる。誤解や偏見が多く、患者自身が病気を受け入れられない。そのため、治療を先延ばしにしがちだ。
 カルロス氏は「患者が状況を否定するのは普通のこと。肉親の支援を得られないことがある」と危惧している。
 ジョゼ・フェニッシオさん(仮名、68)は「エイズと分かって、一人で苦しんだ。悩みを共有できる人がいないから」と重い口調で語った。六人いる子供の末っ子に打ち明けることができたのは、診断から一年以上経ってからのことだという。

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