2006年3月21日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十八日】国連は十七日、ブラジルの人種差別の現状と対策についての報告書を発表し、その中で人種差別問題が根深く、行政と司法、そして市民社会までもがその問題に取り組むことを拒否していると批判した。
政府が差別問題の存在を認識している点は評価しながらも、具体的な解決策は実施されていないと国連は警告する。貧困生活を送る白人の割合二二%に対し、黒人のそれは四七%に達していること、銀行では黒人の管理職が全体の一〇・八%を占めるに過ぎないこと、黒人女性の平均賃金が白人男性の四〇%であること、黒人女性の五人に一人は家政婦として働き、うち一七%は賃金すら受け取っていないなどの現状が同報告書で報告されている。
また、国連は黒人への暴力事件にも注意を向ける。サルバドール市では、昨年一月から八月までに六百三十一人の黒人が殺害され、二〇〇四年比で一九%増加した。黒人を麻薬密売人や犯罪者とみなす傾向があり、警察官による殺害事件も存在する。
黒人差別の問題は奴隷時代の名残であり、現代のブラジル社会に深く根付いていると同報告書は指摘。ブラジルは人種間の関係は民主的で、差別問題は単に経済的な問題に過ぎないと多くの人々が信じており、そのことが問題解決を困難にしていると分析している。
問題解決策として国連は、差別対策への予算増加に加え、司法機関に専門チームの設置、学校の授業でアフリカの歴史を取り上げること、黒人の大学入学促進など三十五の提案を行っている。