2006年3月14日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十三日】リオデジャネイロ市内の陸軍部隊の格納庫から武器を奪い去られた事件を追及している陸軍は、事件発生から十日間、麻薬組織の仕業とみて、組織が根城としているファベーラを包囲して捜査を続けている。
しかし麻薬組織とみられる一団の過激な抵抗にあい、ファベーラへの突入を阻止されて捜査に進展が見られない。また断続的に展開された銃撃戦の巻き添えで住民が流れ弾に当るなど負傷者が続出、さらに住民の抗議運動が激しくなっていることを受けて、軍首脳部は完全包囲を撤回し、一部を残し撤兵を決定した。
捜査を指揮する東部方面司令官は、盗まれた武器を奪回するのが至上命令だとして、作戦を継続していくとの強い姿勢を貫いている。いっぽうで麻薬組織とそれを指示する住民らは、撤兵の報いに花火などの祝砲を上げて勝利のお祭騒ぎを繰り広げた。
事件は三日夜、同市東部の輸送部隊に、忍者風の覆面と軍隊の制服に身を包んだ七人組が侵入、警備隊を銃で拉致して格納庫の鍵を奪い、中から自動小型銃十丁とピストル一丁を盗んで逃走した。
軍部はこれに対し、威信にかけても盗品の奪回を至上命令として、ブラジリアやゴイアス州の応援部隊も動員して千五百人の隊員を投入した。犯人らがファベーラに逃げ込んだと見て、市内南部のファベーラを完全包囲して捜査に乗り出した。
とくにファベーラ・プロビデンシアは戦車やヘリコプターも出動して厳重捜査が行われた。家宅捜査で一〇キロ以上の麻薬が押収された。しかし麻薬組織と見られる一団は過激な抵抗で軍隊の突入を阻止した。週末の十一日から抵抗が激化し、二時間に及ぶ銃撃戦が断続的に発生した。この銃撃戦で破裂した手榴弾の破片で三人が負傷、流れ弾で二人が負傷した。
このため住民四、五十人からなる抗議集団が軍隊の弾薬を奪おうとして小競り合いとなり、四人が逮捕された。十二日には抗議集団に混じった組織員が自動小型銃を乱射した。幸いにもケガ人は出なかった。
さらに軍隊が仮駐屯所としているファベーラ内のスポーツクラブが、ファベーラ上部からの発砲や手榴弾で屋根が穴だらけになる状態となった。これを踏まえて陸軍では完全包囲を解き、今後の捜査方針を検討することになった。
麻薬組織は住民が軍隊や警官に協力するのを阻止するため、住民の電話代明細書を提示させて、通報の有無をチェックするなど徹底抗戦の構えを見せている。