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コラム 樹海

 (財)国際女子研修センターの小南みよ子理事長がさきごろ、ひっそり亡くなった。享年九十六、信念の固まりのような「明治の人」だった。あえて明治と書くのは、世代が新しくなってくると、こういう人は少なくなるという意味だ▼ひょっとしたことから、海外に移住した青年たちが配偶者を容易に得られないという実情を知った。直ちに「嫁ひでり」の青年たちに花嫁を世話する〃事業〃を起こした。神奈川県藤沢市の自宅を開放し、その名も海外移住婦人ホームとした▼費用は自分で負担した。五〇年代の終わりは、未だボランティアという呼び方が一般的でなかった頃だ。小南さんは正真正銘のボランティアだった。仕事が軌道に乗ってくると、手がおよばないところを海外協会連合会(そののち海外移住事業団)に協力を求めた▼絶対必要な事業をしているという自負があったので、事業団の職員にも押しが効いて、はっきり、ずけずけ口をきいていた。青年たちや、送り出す女性たちに対しても同様だった。言いたいことを言わなければ〃強力な仲人〃たりえなかった。徹底を期したのである▼ブラジルにも何度も足を運んだ。いつも和服だった。襟元も裾もあまりかまわないといった様子だった。実質的に男勝り。成立した青年夫婦たちがうまくいけば、それで十分だったのだ。送り出した女性三百七十人。途方もない数だ。アフタケアも親身だった▼小南さんのような人はもう出ないだろう。出にくい世の中ともいえる。(神)

06/03/08