2006年3月7日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙五日】裁判官による縁故採用の禁止に続き、議会法制委員会(CNJ)は四日、定年退職した裁判官の恩給に対する上限で最高裁の判断を仰ぐことにした。国内の全裁判官注目のもとで最高裁は九日、司法官特権について表決する。裁判官の給料は法令一一一四三/〇五号により、最高裁判事の給料二万四五〇〇レアルを上限として調整されていた。しかし、特権維持を理由に数々の手当てや既得特権を恩給に折り込み、三万五〇〇〇レアルを享受する元裁判官もあり、CNJが次の標的とした。ブラジル弁護士会(OAB)の話では、全裁判官一万四千人のうち、三千人は上限を超過しているという。
最高裁の表決を参考に、CNJは裁判官の給与査定を行い、新たな給与規定が設けられる。裁判官らは焙烙(ほうろく)の上で、特権失効と報復措置について協議する。縁故採用の禁止で裁判官は煮え湯を呑まされたところへ、第二弾特権カットには怒り心頭に発する思いだ。最高裁の援護射撃のもと、司法府高官の保護による癒着関係をCNJに禁じられ、枝を折られ葉をむしられる思いである。
州によっては高等裁判事が、三万五〇〇〇レアルを一律享受している。高等裁判事らが特権をかさに公金を貪っていることは公然の秘密となっている。この違法行為は予算管理の負担になっているが、高等裁判事には証拠隠滅の特権も付与されている。高等裁判事にとって上限は基本給なのだ。
甘い汁に預かれない地方裁の現役裁判官は、薄給に甘んじている。OABの調査によれば、裁判官の手当てや賞与は四十種類ある。連邦令が要求する義務という観点に立てば、裁判官の行為は国家に対する詐欺罪であると、OABは考えている。
一方、司法官協会のシウヴァ会長は、連邦令の上限も大切だが、裁判官には勤務年限に対する調整を優先すべきだという。上限に固執すると、三十年選手が昨日赴任した新裁判官と同額待遇になることもある。多くの裁判官は、特権を国家から貰った勲章と見るらしい。地方の裁判所には名誉裁判長がいて、いくつもの名誉職を兼任する。実務はないのに、手当ては当然のように要求する。
ブラジルの政治改革は、二つの大きな壁がある。一つは三権分立により各府が共同体意識によって権限に固執すること。もう一つは社会保障制度のネック。三権分立のため給与の上限で既存特権を主張し、いつも改革は座礁する。それを最高裁がどう判断するかに懸かっている。
いつも給与の上限で引き合いに出るのが、大統領の給与だ。たったの八八八五レアルで、最高裁判事の三分の一に過ぎない。こんなことなら大統領など辞めて、裁判官の試験でも受けたほうがよさそうだ。高給をとるのは、裁判官や検察庁の検事ばかりではない。連邦警察の刑事が一万五〇〇〇レアル、中央銀行のアナリストが一万レアル。メイレーレス中銀総裁が八三〇〇レアルなのに、それより高給を取る中銀職員は、ゴロゴロいる。