2006年3月7日(火)
愛読書は『文藝春秋』と『中央公論』、それに『ビッグコミック』。日本文学に関心があり、夏目漱石の『我輩は猫である』をポルトガル語に翻訳するのが夢だ。心臓科医でもあり、希望すれば、高血圧や糖尿病について流暢な日本語で診察を受けられる。書斎は「文学」を始め、「医学」、「歴史」など約五千冊の日本語図書で埋まっているという。自他共に知日家だと認める、エドリアルド・A・ジャコウドさん(56)=サンパウロ市=に、日本への思いなどをざっくばらんに聞いた。
夏目漱石、森鴎外、谷崎潤一郎……。日本の近代文学を代表する作家の名がすらすらと出てくる。「好きなジャンルは、私小説かな」。書籍は日本語で読み込んでいる。
日本語学習歴は実に五十五年──。タウバテ市の出身で、幼いころから日系人に囲まれて育った。それがきっかけになり、十一歳から日本語学校に通い始めた。
「日本人と西洋人では、考え方が全く異なる。例えば日本人はいつも『がんばってください』と言います。自殺が多いのも、そんなプレッシャーから来ているのでは。西洋人は自信がなくても、あるようなふりをしていますよ」。
大学では医学の道を志し、心臓科医になった。日本への興味が尽きなかったので、七〇年代半ばにサンパウロ大学に入学して日本語学習に励んだ。国際交流基金の研修で一カ月間訪日し、日本語力に磨きもかけた。
「NHKを視聴して、ニュースやドラマをみています。連続ドラマの『風のハルカ』が面白いですねぇ」。
インターネットで、日本語図書を購入。「文学」「医学」「歴史」「仏教」など蔵書は五千冊になる。
天理教に携わっている関係で、最近は日本通いが続く毎年だ。そのたびに、書店や古書店で希望の図書を探し求めている。
本業は、というとサンパウロ市内の州立病院のほか、日系人経営の「ブラジル病院」(HOSPITAS BRASIL、サント・アンドレ)に勤務。日本人患者を診察することも少なくない。「高血圧、糖尿病など生活習慣病について、日本語で応対しますよ」。
五年ほど前から、三和学院に通学して、日本文学の研究を続けているというジャコウドさん。「ブラジルには、日本の小説のポルトガル語版が少ない。夏目漱石の『我輩が猫である』を翻訳するのが大きな夢。毎日、文章に目を通しています」。