トメアスー移住地を舞台にした小説『アマゾンの歌』の主人公・山田義一さんの息子、元(はじめ)さんと話をする機会を得た。「父は頑固一徹な人だった」。同地では土地、気候などの悪条件に耐えられず逃げ出す人がほとんどだった。義一さんは違った。「一回入ったらがんばり通す。脱耕していないのは父だけ」。それが理由で小説の中心として描かれた。
元さんは一九二九年、二歳で渡伯。教育勅語を義一さんに教わり、小学生から農業に従事した。母や兄弟の死も重なり苦労ばかりが続いた。それを乗り越え、五〇年代には同地は「ピメンタ」で一気に潤い始めた。
五四年に建てた「ピメンタ御殿」でそう振り返る元さん。その木造建ての家には、移民生活のさまざまな想いが染み付いているように感じた。そして何より、その空間には「父への敬意」がにじみ出ていた。 (南)
06/03/04