2006年3月3日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十八日】今、カシャッサの美味さが見直され、業界ではイメージアップに奔走している。カシャッサは砂糖キビを原料として蒸留したピンガ酒のことで、ブラジルでは古来から大衆酒として愛飲されてきた。現在、大小合わせて四万のメーカーが五千以上のブランドで販売しており、年間生産量は一三億リットルという世界有数を誇っている。売上も六億ドル市場となっている。しかしピンガは従来から乱造の上に品質管理が行き届いていないことから「安かろう、まずかろう」のイメージが強く、貧困層の飲み物として定着した。このため業界ではブラジル・カシャッサ振興プログラムを立ち上げ、上流階級や海外向への浸透に注力している。
カシャッサはバールの酒棚に並び、一見労働者風の客が五〇センターボ硬貨を握りしめてグイ飲みするのが定番となってきた。振興プログラムではこのイメージを拭い去り、上流階級にも良さを見直してもらおうというもの。
輸出は現在年間で五〇カ国向けに一五〇〇万リットルに達しており、年々一〇%の上昇となっている。ドイツではバーやレストランでスコッチウイスキーなどと肩を並べて酒棚に収っているし、スペインではレモンと砂糖でカクテルしたカイピリーニャが好評で一つのブームになっている。これにより同プログラムでは二〇一〇年には四〇〇〇万リットルに達すると予測している。
これを踏まえて国内でも、カシャッサを蔑(さげす)んできたAとBクラスと呼ばれる上流階級への浸透を目論でいる。当初はこれに二〇〇万リットルを目標としている。
ヴェーリョ・バレイロのブランドで一定顧客を握っているタトゥジーニョ社は、年間四〇〇〇万リットルを製造しているが、上流階級向けに金ラベル印を一本五〇レアルと、スコッチウイスキー八年物並の価格で売り出し、高級酒をアピールしている。
「ボア・イデイア(グッド・アイデア)の宣伝文句で売上を伸ばした51社ではCDE階級とランクされる中産および貧困層のグイ飲み需要は頭打ちになっているとして、とくに若者向きに果物の味をミックスしたアイス51やフローズン51を新発売した。またカイピリーニャで代表されるカクテル分野の開拓に注力している。さらに品質管理が重要でこれにより一定品質を保持するのが肝要だと強調している。同社ではカンピーナス大学(UNICAMP)が開発した近代的なラボで品質管理をしているという。
根強い人気のイピオカ社も同様の意見で、ウイスキーやウォッカなどの「外国カブレ」商品を排除してブラジル伝統のカシャッサを見直すべきだと主張している。同社は年間八〇〇〇万リットルを製造、二十以上のブランドで売り出している。蒸留後二年寝かしたものは一本一〇レアル、創業百五十年記念品は二〇レアル、高級限定品は八〇レアルで販売している。さらに常に五%は輸出用に保存している。
業界の懸念材料は原料の砂糖キビの確保だ。現在カシャッサ用の栽培面積は一二万五〇〇〇ヘクタールだが、燃料用に需要が増えて高値で取引されるようになってきたことで、安定供給が脅かされている。