ボランティア・グループ『あしあと』が、着々移民名簿のローマ字化をすすめている。最近、名前(漢字)の読み方で、問い合わせを受けた。名前の読み方はむずかしい。日本人でも読めないのがあるのに、まして二世や三世たちは、と思う。しかし、熱心にやっている▼『あしあと』が、この仕事を思い立ったのは、子孫たちが「先祖は、いつ、どこから、どうして、ブラジルに来たか」を知る道しるべにしたいからだ。移民名簿には、船名、神戸出港日、サントス着港日、家長出生地、家族名、続柄、族籍(戦前は、士族、平民とかいった)などが記されている▼家族の労働力が数字で表されているのが、人間らしく扱われていないようで、哀しい。十二歳以上は1、十一歳以下は年齢に応じて2分の1、4分の1、赤ん坊は0だ。家族の合計が3以上になっている。そのため、足りない家族は、親戚、係累を構成家族にして数字を満たしたのだ▼名簿の余白に、ひんぱんに「逃亡」の書き込みが見える。海外興業株式会社が、備考にしたものか。多くは、着港後、五カ月以内に逃げている。定説のように、収穫できるカフェの実が少なくて、借金ばかりがかさむ見通しがついたから、逃げたのであろう▼『あしあと』の翻訳では、逃亡までは訳出しないが、ルーツを辿ってみるであろう子孫たちにも、ぜひ過去の事実を知ってほしいものだ、という気持になったりする。あなたの現在は、こうした先祖の艱難の末にあるのだ、と。(神)
06/02/15