援協福祉部の〇五年高齢者相談数は、前年に比べ倍増したという。延べ千七百十八件から同三千四百三十七件に増えた。福祉部の年間実働日を二百六十日とすると、一日平均十三・二件だ。相談内容でもっとも多いのは「老人ホームに入りたい」「独り暮らしで生活に困っている」。日系移民社会は、今、まさしく問題が多発する高齢者時代である▼ある過去の時期、ブラジルの日系家庭は核家族化しない、子が親をみる、したがって老人ホームの需要は少なく推移するだろう、といった議論があった。これは、外れたと言ってよい。近年は、家庭内でお年寄りが若い者にかまってもらえない。若い者たちは多忙なのだ。だから「同居孤老現象」さえ起きる▼弱者のお年寄りは、みずから、改善策を打ち出すことはできない。家族がいても、老人ホーム入居を計らなければならない時代なのだ。さて、そのホームのカーマ数だが、援協福祉部が、相談を受けて「そうですか。わかりました。すぐ手配しましょう」と言える状態とはほど遠い▼新築をする余力はない。入居希望者あるいはその家族の費用負担力が十分にあれば事情は変わってこようが、相談でみるとおり、生活に困っているのだ▼援協には、半世紀近い、たゆまぬ活動の歴史がある。今年も創設時の原点「移住者保護」―今日的にいえば「高齢者支援」を重点事業にしている。老人ホーム不足は、一団体の手に余る問題に違いない。なんとか隘路打開を計っていきたいものだ。(神)
06/01/25