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コラム 樹海

 近ごろは中国や韓国に首位の座を奪われたりと余り元気はないけれども、それでも日本は鉄鋼大国であり、世界に誇る生産国である。ブラジルなどから鉄鉱石を輸入し溶鉱炉で製鉄するのだが、あの戦争のときには鉄鋼不足に泣かされた。17日のニッケイ新聞にあった「竹筋橋」の話は、鉄もなければ食べる物もない当時の悲劇を物語るものと云っていい▼長崎県佐世保市のコンクリート製の鉄道橋が、実は鉄骨ではなく竹が使われているらしいというのだ。工事を見ていた人が健在で「鉄がないので竹を組んで橋をつくっていた」の証言があり工学院大学が近く調査するそうだが、あの物不足のときならば、鉄筋ならぬ竹筋もあったかもしれない。鉄道会社によれば、安全性に問題はないと申すが、本当に大丈夫なのかなの疑問もちょっぴりとばかり残る▼もう古い話なのだが、あの大戦のときは鉄の不足が深刻であり軍部も対策に苦慮している。そんなこともあって昭和16年になると「金属回収令」という法律が出て家庭や学校にある金属の供出が義務づけられた。鍋釜に始まって火鉢や鉄瓶。寺では鐘や仏具。学校では二宮尊徳像。鉄道の線路までをも供出した。そういう苦境の底にあったのだから「竹筋」があっても不思議ではない▼それにしても、誰が考え出したものなのか。よくぞ竹を思いついたものである。強度やコンクリ―トを支える力などをきちんと計算してのことだろうから―これは大変な発明に違いない。できれば―。この「竹筋橋」を生み出した技術者の名前も知りたいものだが―。   (遯)

06/01/24