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農業補助金は「中世の遺物」=先進国のエゴが国際貿易歪める

2006年1月11日(水)

 【エザーメ誌八五八号】ブラジリアのフランス大使館で十二月初めに催された晩さん会でフルラン産業開発相は、多数の途上国首脳が言いたくて喉に引っ掛かっていたことを堂々と代弁した。EUが農産物輸出や農業生産者に供与している補助金は、「中世の遺物」で「時代遅れの骨頂」だと同相が糾弾した。
 国際舞台の外交辞令を破った爆弾発言は、WTO(世界貿易機関)香港閣僚会議を控え、ブラジルの要求に起爆剤を仕掛けた。出席者の一部は皮肉笑いをして、聞き流そうとした。同相は間を居れず「笑いごとではない。これは深刻な話なのだ。諸君は第二次大戦後、ヨーロッパが消滅したことを知らないのか」と怒気含みで恫喝した。
 同相は引き続き言った。「EUのみならず、生産者ロビーを温存する米国、聖域論を振り回し鎖国時代の感覚丸出しの日本は、世界の潮流に逆らって大通りを逆方向へ走っている。途上国に対し工業製品とサービス部門の市場開放を要求するが、自国の農業部門は固く門戸を閉ざし、知らぬ半兵衛で押し通そうとしている」と警告した。
 EUは二〇〇四年、農業補助金に一三三〇億ドルを費やした。米国は四九〇億ドル、日本は四六〇億ドル。先進国は農業補助金ばかりでなく、後進国の農産物輸入に法外な高率関税を掛けている。日本の場合、米輸入に対し二五五四%という天文学的関税率を課している。
 国際貿易研究所(ICONE)のマルコ・ジャンク所長は、これら先進国が農業分野で関税と衛生規制の二刀流を駆使し、国際貿易を歪める元凶であると非難した。これら先進国の利己的なルールは、後進国の貧困層を餓死線上へ追いやるものと訴えた。
 世界銀行の調査では、農産物の完全市場開放が行われるなら、途上国は八六〇億ドルの利益が上がり、三千万人が極貧から救われるという。しかし、国際貿易の舞台では力の論理が罷り通っている。一方で平和の旗を振り、他方では分際が強いられている。
 WTO香港会議の前夜ともいえるフランス大使館の晩餐会に、最大の難物とみられる多数のフランス経済ミッションも参席した。同席でフルラン産業開発相がブラジルは工業製品の輸入関税を一律五〇%下げてもよいが、EUが交換条件を提示しないならブラジルが一国で道化役を演じても仕方ないと、啖呵を切る場面があった。

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