2006年1月11日(水)
ビック4の一角を崩せ――。トヨタ・メルコスールの社長交代式が九日晩、サンパウロ市内グラン・ハイアットホテルに約一千人の取引先などの関係者を集めて盛大に行われた。長谷部省三・新社長を祝福するために、日本本社から浦西德一副社長が駆けつけるなど、中南米への強い意気込みが伺われる式典となった。
二〇〇九年には世界生産一千万台を目指し、最大手の米ゼネラル・モーターズ(GM)をぬいて世界一になる日も近いと見られている同社グループ。
南米地域はフォルクスワーゲン、フィアット、GM、フォードなど欧米勢の「最後の牙城」とも言われ、二〇一〇年にはブラジル、アルゼンチンだけで三百万台の市場に拡大するとの予想もあり、メルコスールは重要な戦略的拠点となってきた。
最初に浦西副社長は、「メルコスールのオペレーション(作戦)は新しい段階に入る」と高らかに宣言。「ビック4に割ってはいる勢いを期待している」との激励の言葉を贈った。
新社長の長谷部氏に関して、二十九年間も中近東、アジア、オセアニアなどの海外拠点を渡り歩いた「百戦錬磨のつわもの」とし、「中東では鉄砲玉や手榴弾を潜り抜けてきた。度胸や体力、知力そろったうってつけの人物」と紹介した。
一九五八年一月に設立され、バンデイランテス車などを生産してきたトヨタ・ド・ブラジル。一九九八年九月にサンパウロ州インダイアツーバ市に第二工場を建設、カローラの生産を始めた。
〇一年にトヨタ・ド・ブラジル社長として赴任した岡部裕之氏は、〇三年からアルゼンチンを含めたメルコスール社の社長に就任。
その間、〇二年にはカローラ発売開始、〇三年にメルコスール社創立、〇四年フィーダー発売、〇五年にはアルゼンチンでグローバル戦略車の新型ハイラックスの量産に南米で初めて乗り出すなど、立て続けに大型投資を重ね、世界一への布石を打ってきた。
メルコスール社が生産十万台を達成した昨年、カルタ・カピタル誌は、ブラジル内でも最も敬意をもたれた自動車製造会社として表彰、ルーラ大統領ら来賓に祝福された。
浦西副社長はこれを「企業市民として当地に認められた証し」と認識し、さらなる躍進を約束した。
岡部氏は流暢なポ語で、帰国を前に別れのあいさつ。任期中に亜国の経済危機やブラジル不況を乗り越え、域内での十万台生産達成と、中南米への輸出基盤を築いた二点を強調。「厳しいなかでも、常に楽観する気持ちを忘れずに取り組んできた」と振りかえった。
由美子夫人とともに赴任した、五十二歳の長谷部社長は「この地域に素晴らしい可能性を感じる。全ての勇気を振り絞って使命をやり遂げたい」と力強く語り、発展を誓った。
最後に岡部夫妻に花束と記念品が贈られ、詰めかけた約千人が別れを惜しんだ。