2006年1月11日(水)
ブラジルのサトウキビから作るアルコールの一種で、自動車などの燃料に活用できる「エタノール」の対日輸出拡大を目指し、先月末に設立が決まった「日伯エタノール」が、二〇〇八年から営業に乗り出すことが分かった。先月末、同社関係者がルーラ大統領と会談、設立報告した席で明らかになった。エタノールは燃やしても二酸化炭素(CO2)を輩出しないため、地球温暖化対策上有効とされ、石油などの化石燃料に代わる燃料と関心を集めている。日本は大きな市場。両国の経済関係強化に向け、動力源としての役割も期待されそうだ。
「日伯エタノール」はペトロブラスと日本アルコール販売が五〇パーセントずつ出資する合弁会社。
最高責任者に就任することが決まった日本アルコール販売の雨貝二郎社長は先月二十一日ブラジリアの大統領府で、ルーラ大統領と会談し、「設立は大統領と小泉首相の直接会談の成果である」と強調。営業開始時期について、「ブラジル日本移民百周年に当る二〇〇八年には」との見通しを示し、「日伯関係強化につなげたい」と語った。
大統領も、合弁会社の設立を「両国関係の新しい時代の幕開けに繋がる」と歓迎。「両国が持続可能なエネルギーの開発、環境保護のための戦うことで一致した」とし、支援を惜しまないと明言。「小泉首相も最善を尽くしてくれるだろう」。そう、今後の発展に期待を込めた。
雨貝氏はまた、鉱山動力省、開発商工省、農務省の各大臣とも会談。意欲を伝える一方、協力を要請した。
これに対し、各大臣は「ブラジルはエタノールで三十年以上の経験を持つ。日本と提携することで、地球温暖化防止に大いに貢献したい。そのための協力を約束する」などと積極的な姿勢を見せた。
このジョイントベンチャープロジェクトに関しては特に、フルラン開発商工大臣の後押しが大きいとされる。
第六回WTO閣僚会議(昨年一二月十三日から十八日、香港)で二階俊博経済産業大臣と今件についてすでに意見交換しており、自ら「二階・フルラン・コネクション」が誕生したと明かしたほど。
今回、「正直なところ念入りで詳細なスケジュールがなかった」雨貝氏が大統領と会談できたのも、フルラン大臣の取り計らいだった。
リオのペトロブラス本社での契約締結は、ブラジリア訪問を先立って同十九日に行なわれた。NPO法人・循環資源促進機構(通称・グリーン・ブリッジ)の神谷光徳理事長、高崎ルイス・アントニオ事務局長らが立ち会った。
同社の今後の目標として、燃料用として高い品質と安全性と、信頼できる長期供給の確保▽大量のエタノールを日本のエネルギー基盤に導入する▽技術、商業的解決は両社が協力して構築▽二酸化炭素などの温室効果ガス排出削減の実現、京都議定書への貢献―などが挙げられた。
ペトロブラスは社長代理でパウロ・ロベルト・コスタ供給部長が契約に署名。「市場が不安定にならないようにしたい。生産者との長期契約、サトウキビ作付け面積の拡大が必要だ」と意欲を述べた。
ブラジル当局の支援取り付けに好感触を得た雨貝氏は訪問を振り返り、「日本人の几帳面さとブラジル人の万能性。二国が互いに補えば大きな力になりえる。われわれは素晴らしいパートナーとなれるはず」と語り、「ブラジルと日本が交流を深める中で、日系社会がより大きく関わってもらえれば」と期待を寄せている。
(写真・記事資料は高崎ルイス・アントニオ氏が提供)