【共同】ブラジル被爆者平和協会会長の被爆者森田隆さん(90)が6日、国立広島原爆死没者追悼平和祈念館(広島市中区)の体験談ビデオの収録事業で「本当の地獄を見た。あの死者たちの姿を、二度とこの世に作ってはいけない」と語った。収録は同市で行われた。
1945年8月6日、21歳だった森田さんは故郷の広島で、旧日本陸軍の憲兵として防空壕を作りに行く途中に被爆した。爆心地から1・5キロの地点で爆風に飛ばされ、首にやけどを負った。放射性降下物を含む「黒い雨」も浴びた。
学生に「兵隊さん、敵をとって」と言われたが、被爆後の惨状を見て「復讐なんてない」と思い直したという。
森田さんは56年に家族でブラジルに渡り、84年に協会を設立。裁判で健康管理手当の受給権を勝ち取った。
祈念館は、2007年度から在外被爆者の証言を収録する事業を始め、韓国や米国、メキシコなどに住む34人分を公開している。
森田さんは6日、南米5カ国を巡り、被爆者の健康相談を実施した医師団の報告会にも参加した。在外被爆者が居住国で医療を受けた場合、現地ですぐに医療費が支給されないことから「国内の被爆者と同じ援護を」と改善を求めた。