健康広場
2005年12月28日(水)
援協は二〇〇六年一月末から、消化器系の精密なチェックアップ(Check-Up)を始めることにしました。胃潰瘍、胃がん、大腸がん、慢性肝炎などが東洋人に目立つため。これらの疾患は早期発見が治療の決め手になり、チェックアップが大きな役割を果たします。この機会にその歴史や変遷、効果・目的などについて説明したいと思います。
伝統的な医学において、医師は症状の聞き取り、病歴のチェックやそれに関わる身体検査などに時間を費やしました。病気が存在しているとまず予測され、それを発見するのが医師の仕事だと考えられていたため。診断を補完するものとして、検査が要求されました。
診断を下してから治療に入るのだから、早期診断こそ治療の結果を左右するもので、チェックアップの出現は画期的なことだったと言えます。
チェックアップは個人や集団の健康状態を把握し、病気の予兆を見いだすために行う一般検査のこと。英国で生まれ、瞬く間に広がっていきました。医学(治療技術)がそれに並行して、進歩したからです。
なぜなら一九五〇年代に、CTスキャンで頭部の基底に小さな腫瘍を確認できても、当時は治療方法が確立しておらず手の施しようがなかったはず。失望が増大するだけだったでしょう。臨床医学の発展が伴わなかったら、チェックアップは意味がありません。
チェックアップは現在かなり成熟し、九割が死亡するといわれる心血症などに好結果を残しています。また前立腺がんはかつて、転移した状態でないと見つかりませんでした。今日では直腸触診のような簡単な検査や前立腺の酵素の分量によって、早期に診断することが可能になり、実に九割の回復を示しています。
日本は一九五〇~六〇年代、胃がん発生率の高い国だと位置づけられていました。前立腺がん同様、がんがかなり進んだ状態でないと発見出来なかったためです。がんを初期の状態で発見するために、多くの研究費が投資されました。
その結果、誕生したのが内視鏡検査です。結果、この十年間にがんの死亡数が減少。それまでの陰気な雰囲気を変えました。
またX線の開発は驚くべきもので、主に呼吸器病学の診断を大きく前進させました。たとえ半影であろうと肺や心臓を撮影し、また食道・胃の影をみることにより、がんや潰瘍を発見できるようになったのは特筆すべきことでしょう。
医療技術の進歩は日進月で、その後CTスキャンが誕生。さらにMRI検査も改良され、二ミリほどの腫瘍も明瞭にみられるようになりました。
乳房の腫瘍を例に挙げてみましょう。十年以上前、旧式のX線は腫瘍が一センチほどの大きさでないと映らず、三割が転移していました。それ以上の大きさになると画像が不鮮明になり、乳房の脂肪腫や嚢胞などと確実に区別が出来ませんでした。
最新鋭のマンモグラフィーは〇・五ミリの腫瘍でさえ正確な診断が下せます。そのため、病気の回復率も伸びました。さらに、分子時期にある癌を発生段階で見分ける技術の開発も進んでいます。
(つづく)