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一石二鳥の季節

グルメクラブ

2005年12月23日(金)

 膨大な商品情報が詰まったインターネットオークションに注目している。
 ほかではちょっと買えない物も探し当てることができる。アメリカでは「幽霊」が出品・落札されたらしい。実に奥深い世界だ。
 先日友人の家を訪ねたら机の上に、かつて耽読した金子光晴の放浪記であり回想録「どくろ杯」が。これは懐かしいなあと思い、借りて読んだ。
 その後、試しにネットオークションでその杯を探してみたら、あった。
 チベット密教の法具・カバラ(頭蓋骨・髑髏杯)。現在の価格50000円。出品地域・兵庫県。
 出品者は「本物のラマ僧の頭蓋骨です。入手不可能な非常にレアな究極の逸品」とアピールしている。
 商品写真も掲載されているのだが、これがけっこうリアルで気色悪い。毛細血管の跡みたいなのも確認できて、みているうちに頭がジンジンしてきた。
 金子が上海で目にしたのは、「男をしらない処女の頭蓋骨」からつくられたものだったという。
 蒙古の酋長がそれで馬の乳か、高粱の酒を飲むのだろうと、金子は思った。
 日本でつくられたどくろ杯もあった。それで酒を飲んだのは織田信長である。自分を裏切った浅井長政や朝倉義景の頭蓋骨だった。
 太古、人間は動物の骨や角を酒の器としていた。それがどくろ杯の発想につながるのだろうか。
 そういえば、皮袋という器もあった。「新しいぶどう酒は新しい皮袋に」。聖書の言葉を思い出す。
 皮袋のワイン入れ。またネットオークションで探す。これもみつけた。千五百九十円。出品地域・奈良。出品者は「スペインのお土産でもらったものです」。がいりませんよ、そんなの。とつぶやいたくらい、ちゃちな品だった。
 動物の骨や角、皮のほかに、日本では貝殻も利用されていた。これはいま考えてみても風流である。貝殻の酒器を検索。オークション市場には「フランスのアンティーク 貝の器」があった。八千円。ややこれはなかなか上等な感じ。
 日本酒を青竹で、カシャッサをひょうたんを二つに割った器で飲んだりもする。でも、そんな「自然志向」が酒の味を引き出せるかどうかは疑問だ。
 そういった変り種の器は雰囲気を演出するが優勝カップに注いだシャンパン、あれに近いノリである。シャンパンならは、上等のグラスで飲むほうがその味わいが際立つ。
 酒を買って飲む前にそれにふさわしい器をそろえる。できれはそうありたい。酒は最高のグラスに出会ったときにこそ真価を発揮する。でもなあ、お金がなあ、とぼやいた人はいまの季節がチャンスだ。
 まさに一石二鳥。クリスマスのプレゼント用を狙うのである。グラスをセット販売している。ブラジルのシャンパン、シャンドン一本三十レアル前後だが、グラス二個付きのセットは八十レアルほど。グラスは決して安物ではない。ハンドメイドの結構な品だ。
 日本でも著名な家具デザイナーのカンパーニャ兄弟=サンパウロ市=がデザインしたグラスが付いてくるのはウイスキーのシーバスリーガル。ネットオークションに出品されていたら、それはボクです。

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