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コラム 樹海

 イラクの国名は、アラビア語で「豊かな過去を持つ国」なのだが、現況は自爆テロや治安の悪化で混迷している。確かに「目には目を」で知られるハンムラビの法典は、今から3800年も昔に集大成されたものだし、それにもましてチグリスユーフラテス文明が輝かしく光る。あの「千夜一夜(アラビアンナイト)」の妖しくも楽しい物語も忘れ難い▼こんな夢のような過去を誇る国が、民主的な国を建設しようと総選挙を実施した。爆弾テロや暗殺が続く不安のなかでの投票である。イラク治安部隊と駐留米軍が31万人も出動し厳戒態勢を敷いているが、それでも投票所付近に砲撃があったりして混乱は多い。投票する人はみんな身体検査され危険物を所持していないかを厳しく調べられてもいる▼今は投開票が無事に終わるのを願うのみだが、この国を平和で豊かな国にするのは難しい。石油という資源は豊富だけれども、国民の60%を占めるシーア派と35%のスンニー派の宗教的な抗争があるし、少数民族であるクルド人という難問を抱えてもいる。シーア派の中にも「反米」を掲げて武力抗争している派もおり、政党も多いし主張も意見も多岐に亙る。何しろ、今回の選挙には231政党と会派があるそうだから驚くしかない▼これだけの政党があるのだから、有権者も「どの党を選ぶか」と悩むだろうし、とても単独政党で過半数を獲得するのは至難と見ていい。現地外交筋は、シーア派の「統一イラク同盟(UIA)」が優勢としているが、選挙で勝ったとしても他党との連携が簡単に進むの保証は何もない。   (遯)

05/12/17