師走―。極月や臘月とも云い歳末の慌しさを何となく思い起こさせる。本来は陰暦の12月をさすのだが、近ごろは陽暦でも用いるし「師走の大売出し」の広告が商店街に並ぶ。確かに―12月は忙しい。1年間お世話になったのだからと京都などでは「針供養」もあるし―「煤払い」は13日が昔からの決まり。羽子板市の華やかで賑々しい風景も忘れ難い▼年の暮れになると「年の市」が始まる。年末年始に必要なものを取り揃えて売り出すので多くの人々が押し寄せて大賑わい。ところによっては「暮れの市」ともいうが、田舎では買い物を積む馬を引き、若水を汲む手桶を必ず買って帰る地方もあったそうだ。新巻鮭や鰤も買う。正月は一番大切な節であるから「年取り物」をあれやこれやと購い求める。そんな忙しい月が師走なのである▼神社とお寺も繁忙を極める。終天神や終大師もあるし讃岐の金刀比羅宮の「納め金毘羅」が名高い。新年になると200万人とか300万人もの参詣者が列をなす明治神宮や名刹古寺は、その準備に追われ寝る暇もない。禅宗の寺では臘八接心があり厳しい。雪の山中で難行苦行の釈迦が、この日未明に悟りを開いたとの伝承を受け継ぎ、今も禅僧らは12月1日から8日まで禅堂に籠り坐禅に打ち込む▼不眠不休の坐禅修道であり食事も1汁1菜。8日の朝には茶粥・甘酒・沢庵が出るそうだが、真にお粗末な食事である。一茶に「臘八や我と同じく骨と皮」があるけれども、臘八会の頃の禅僧は痩身鶴の如しとなり眼光炯炯となるのだが―。 (遯)
05/12/10