2005年12月08日(木)
日本の出版社(株)文芸社から、去る十月十五日付で、山本和昂(やまもとかずあき)さんの小説『復讐者』が発行された。山本さんは元移住者、六十八歳。六七年渡航後、農業、日本語教師、日伯毎日新聞記者、会社員などを経て、七九年帰国。その後何度か、主としてアマゾナス地方を、小説執筆の取材のため訪ねている。
小説の題『復讐者』には、ポ語名『VINGADOR』も付けられている。本の帯の文「雄(おす)の世界、ガリンペイロ気質を活写――砂金採りの日本人男性を主人公にアマゾン奥地に展開する人間ドラマ!風土も気質も異なる未知の世界に飛び込んだ日本の青年が、砂金採り仲間のブラジル人の復讐に加担する破目に…」。
山本さんは、ブラジルが、中でもアマゾナス地域の自然、人間、風俗が大好きで、在聖中にも、常に意識のなかにいれていた。ある期間、森のなかでインヂオと共に暮らし、同地域に染まって生きていたいと考えていた節がある。だから、この作品でも、同地域の描き方は、体験した作家でないと書けないほど独特だ。人間(ガリンペイロやインヂオ)の書き方も魅力的だ。作中の登場人物は、悪徳で固まったような者たちなのに、悪人として書き切っていない。表現に優しさが滲み出てしまう。作家の素質なのかもしれない。
十二年間、ポ語と接し、北伯、北東伯も熟知しているので、地名その他のカタカナ表記は危なげがなく、安心して読める。