2005年12月02日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙日】リオデジャネイロ市で二十九日夜、仲間を警官に射殺された麻薬組織のメンバーらが、その腹いせに走行中の路線バスを停めて、乗客十七人を車内にカン詰めにしたまま、ガソリンをまいて火を放つという前代未聞の事件が発生した。これにより五人が焼死、十二人が重軽傷を負った。
焼死者の中には一歳の女児が母親の胸に抱かれたまま、母子ともに死亡した。残り三人の死亡者は火傷で判別できない状況で、惨状の凄さを物語っていた。負傷者十二人は病院に収容されたが、うち二人は全身火傷で重体となっている。
リオ州内では今年に入り警官らに射殺された犯罪組織員の復讐に仲間らがバスを焼き打ちにする事件が七十三件発生しているが、いずれも乗客を全て降ろしてから火を放ったり破壊している。しかし今回は乗客を車内にカン詰めにしたままで、さらに乗客の身体にまでガソリンをまいて火を放っている。これは明らかに乗客の殺害を目的としており、非人道的だと住民は怒りをあらわにしている。
女児を抱いたまま死亡した母親の姉は、犯罪グループは無防備の市民の味方だと思っていたが、これではイラクと同じで、リオの無法も地獄に墜ちたと憤っている。野党議員も事件を重視、州政府が手に負えないなら、連邦の介入を促すべく国会で取上げると息まいている。ブラジル弁護士会(OAB)リオ支部も、射殺事件で組織の復讐は十分予想されたはずで、警備を怠ったのは州治安局の落度だとの声明を出した。
事件の発端は事件現場のファベーラ・キツンゴで二十九日に警官隊との撃ち合いで死亡した組織員に対する抗議集会を犯罪グループが呼びかけたが住民は参加しなかった。
これに腹を立てたグループ十人が同夜、同ファベーラ近くのイラプラン街を走行中の路線バスを停車させて運転手を車外にひきずり出した。グループが投石などでバスを破壊する中、二人が車内に入り持参した二リットルのガソリンをまいて火を放った。その間逃げ場を絶たれた乗客十七人が炎に包まれた。うち十二人は窓ガラスや後の扉をこじ開けてかろうじて車外に脱出したが、死亡した五人は逃げ遅れた。警察では襲った十人のうち身許を割り出して目下追跡中。