さきの紀宮さまのご結婚に際し、ブラジル日本文化協会は、祝意を表するため、記帳の場を設けた。皇室の慶弔のときは、たいてい総領事館が行ってきたが、今回は、文協が総領事館に伺ってから自発的にすすめたようだ▼文協がイニシアチブ(発案の主導権)を取ったといっても、最初に「記帳のこと」を頭に浮かべたのは、一世である。役員の多くを占める二世たちは、行動をとらなかった。過去の、身についた価値観や教育、習慣の相違などから、記帳など思い浮かばなかったのである▼そのことをとやかく言うつもりはない。ただ、ブラジルで一世が死に絶えたとき、こうした昔から日本にある慶弔時の「ならわし」が、伝承されなくなるのだ、と改めて実感した▼だからといって、将来、日伯関係そのものや、日本の政府機関・諸団体と在伯日系団体の関係が希薄になっていくとはいえない。要は各団体の考え方、やり方次第である▼人的交流といえるかどうかわからないが、日系を含めたブラジル人の日本就労は、増えこそすれ減ることはあるまい。日本の労働市場の単純労働力不足は、ますます顕著になろうと予測されるからだ。この分野は一層緊密化していくだろう▼ブラジル人が「サンゲ・アズール」(貴種)に特別の思いを寄せることは、六七年の皇太子ご夫妻(現天皇皇后両陛下)の最初の来伯時に知った。天皇家の長女の結婚式で記帳を思いつかなかったとしても、実際に皇族方の来伯があれば、敬意を表するのは間違いないと思われる。(神)
05/11/25