2005年11月18日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十七日】マット・グロッソ・ド・スル州でエタノール工場誘致が立案されたのに対し、環境破壊を理由に反対を訴えていた同地のNGO(非政府団体)の会長が抗議の焼身自殺を成し遂げたことから、誘致の是非をめぐり議論が白熱している。
自殺をともなった抗議に共鳴したマリナ・シウヴァ環境相は声明文を発表し、環境保全のため工場設立に反対する態度を表明、同州議会議長に立案阻止を求める要請書を送付した。これに対し立案者の同州の通称ゼッカ・ド・PT知事は、あくまで工場誘致を推進する立場を強調し、同環境相の発言に対し「馬鹿げた無知な発言」と激しく非難し、対立を鮮明にした。
エタノール工場は同州パンタナル地区で建設の予定で、州内七市の市長の賛同を得て同州知事が立案し、二十三日の州議会で審議の上、議決されることになっている。これに対し環境保護団体は、世界の自然の宝庫であるパンタナルが汚染されるとして反対を表明してきた。
折しも州環境保護学会が開催された十四日を前に同地区で三十年間エコロジストとして活動してきたNGO団体のアンセル元会長が、抗議集会で焼身自殺を遂げた。目撃者によると抗議集会を開いたカンポ・グランデ市の中央広場で同会長は寝具マットにガソリンをまき、火を放った上で、その下に潜りこんだという。同会長は全身火傷で二十四時間後に息を引き取った。
それから翌日の学会ではこの問題に議論が集中した。誘致組は工場が最新の機器を使い、公害はないとしているもその実証がない点などが指摘され、同学会は反対運動を続けることを確認した。また経済効果もなく、従業員も低賃金であえぎ、誘致のメリットがないとの認識に立った。
シウヴァ環境相はブラジリアで、たとえ議会で承認されても、環境条例をもとに工場建設は国会で阻止するとの態度を強調した。州知事はあくまでも推進すると強固な姿勢だが、関係者によると、エタノール企業は同知事の政治献金のスポンサーであり、今回の工場誘致には利権がからんでいると見る向きもある。