2005年11月18日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十二日】リオデジャネイロ市内の病院の小児科に勤務する看護師が、入院患者の子供十五人に病状と関係ない筋弛緩剤などを注入し死の危険に陥し入れていたことが判明し、「白衣の殺人鬼」として関係者に衝撃が走っている。連警では殺人未遂、薬事法違反の疑いで男を逮捕したが、これまで七人の死亡患者を含む余罪があると見て追及している。また、動機についても取調べを行っているが、日頃は親身な看護師と言われていたことから、二重人格者で、患者や病院がパニックに陥るのを楽しんでいたとのみている。同市では一九九九年、助看護師が入院患者百五十三人を殺害したいわゆる「死の天使」事件が発生しており、医療機関の管理の見直しが求められている。
同市北部の連邦大学付属病院小児科で過去三十年間に、十五人の入院患者が次々と呼吸不全などの症状を起こした。集中治療室に運ばれた患者らはゼロ歳から十歳までの子供らで、救急処置で一命を取り止めたものの、一部は脳障害などの後遺症に悩まされる可能性が強いという。
病院側では相次ぐ不審な事故で極秘裡に調査委員会を設けて調査に当った。その結果、病状に関係ない弛緩剤などの医薬品が患者に注入されていたことが判明した。また騒ぎが決まって今回逮捕されたブエノ容疑者が当直時に起きることから、監視医を配属した。しかし監視医がいる間は何事も起こらず、帰宅直後に二件の事件が起きた。委員会では従業員全員を招集し、了承をもとに持ち物検査を行ったところ、ブエノ容疑者のカバンから筋弛緩剤などの医薬品や注射器が発見された。同容疑者は他の病院にも勤務しており、不測の事態に備えて持ち歩いていると説明したのこと。
病院側ではブエノ容疑者の疑いを強めていたが、確証となったのは入院していた五歳の少女の母親の証言だった。少女は何の異常もなかったのに、ブエノ容疑者が解熱剤と称して注射した。母親は身体を触れても熱がなく抗議した。その直後に娘はけいれんを起こし、手足が紫色に変色して意識不明に陥った。
ブエノ容疑者が医師や看護婦を呼び、娘は集中治療室(UTI)に運ばれ一命を取り止めた。医師の調べによると、注射液は解熱剤ではなく病状に関係ない医薬品で、あと五分放置していたら死に至るものだったという。
これにより病院側は連警に通報、ブエノ容疑者は逮捕された。当直日誌や医薬品投与記録から、過去三十日間に発生した十五件は同容疑者の仕業とみられている。同容疑者は普段は親切で、自分が仕掛けた薬物投与で苦しむ子供を抱いて救急室に走るなどしており、病院や警察では真意が理解できないと語っている。
同市では一九九九年にも市立病院の助看護師が入院患者の呼吸補助器を外したり、劇薬を注射したりして百五十三人を殺害した、いわゆる「死の天使」あるいは「悪魔の天使」事件が発生している。犯人は患者を苦しみから解放するためと当初は釈明していたが、葬儀屋に情報を流し、見返りに報酬を受け取っていたことが発覚、世間の怒りを買った。犯人は七六年の禁固刑を言い渡されたが、その後、何故か三十一年八カ月に減刑された。