2005年11月17日(木)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十六日】政治的相克と金融市場への影響を考慮したパロッシ財務相は十五日、二十二日に予定されていた上院経済諮問委員会(CAE)での質疑を繰り上げて十六日に自発的に出席し、説明する意向を明らかにした。これはビンゴCPI(議会調査委員会)への財務相召喚を挫かせ、ブラジル社会民主党(PSDB)や自由前線党(PFL)など勢いに乗る野党を封じる政府の作戦とみられる。財務相が二十二日まで告発に対して沈黙を守るのは、投機家の暗躍を許し、経済へ悪影響を及ぼすと与党幹部と政府の経済スタッフが判断した。
ルーラ大統領は、パロッシ失脚へ賭ける投機家に一泡を吹かせる狙いがある。十六日のCAE出席は、政府内パロッシ陣営の存続も含めて財務相にとって試金石となりそうだ。財務相の去就がブラジル経済の分水嶺であると大統領は慰留を検討している。
内憂外患の財務相は三日間の休養をとった後の十四日、CPI召喚が避けられない場合、CPI訊問の屈辱を受けるより辞任を選ぶ決意を大統領に表明した。財務相にとって最も長い一日の午後、次期財務相候補のポルトガル次官も含め、最後の晩餐を行った。この時にCAEへの自発的出席で守りから攻めへと姿勢を転じることが決まった。
CAEでは上議全員に質問の機会が与えられる。上院では現経済政策を理解する者が多く、下院のような辛らつな追及はないと思われる。主な質疑は国内総生産(GDP)の六・一%を財政黒字目標とする極端な予算縮小とインフラ投資、経済成長を犠牲にした均衡財政、リベイロン・プレット市長時代の労働者党(PT)資金用リベート疑惑、賭博業者による一〇〇万レアルの大統領選向け政治献金疑惑、キューバからの三〇〇万ドル政治資金の提供、社会経済開発銀行(BNDES)融資金の公的資金流用など。
財務相の沈黙で十四日にサンパウロ証券取引所の指数は下げ、ドルとカントリーリスクが上げた。財務相のCAE繰り上げ出席のため、メルカダンテ上議は上院議長とCAE委員長と段取りを行った。財務相退場の花道つくりではないかとの憶測に同上議が強く反発した。
アントニオ・C・マガリャンエス上議が、財務相は俊敏でCPI委員より一枚上手と評した。CAE出席の先手を打たなかったら、CPIで苦汁を舐めるところだったという。
CPIは十六日、財務相召喚の代わりにオカモトSEBRAE(零細企業サービス)総裁を召喚する。大統領の債務決済で二万九〇〇〇レアルの自腹を切った理由を説明させる。CPIでは友情や犠牲的精神は通用しないらしい。
一方、財務相の市長時代に側近を務めた副市長などPT党員五人が、同市のゴミ回収によるリベートを党へ上納したことで、市警は横領罪として立件した。同相の元側近ブラッチ氏は、警察の訊問でパロッシ財務相を含むリベート関与の元市長四人の名を挙げた。
サンパウロ州検察局は十五日、元側近らが供述した公金横領や犯罪組織の構築告発は同相の関与を立件するだけの効力がないと発表した。仮に最高裁へ書類が送られても、同相には閣僚特権があり、審理には至らないと検察局はいう。